第38話
いつのまにか仲間と共に村にいた。
「あれ…?テトは?」
私はここにいると言うのにミクが戸惑っている。
そしてそれに乗じてみんなも戸惑い始めた。ただの悪ノリか。
《私はここにいるぞお前らー。悪ノリすんなー。》
しかし、その戸惑いようは本当だった。
そして、リンが泣き出した。
「な”んん”でぇっ、も、もっど、いっs、一緒にいだがっだぁぁぁ」
《リン?そんなにリアルに演じないで…》
私がリンの肩に手を乗せようと思った時、手がリンの体をすり抜けた…
《えっ?》
「リン、今泣いてもテトは帰ってこない…よ…」
レンの瞳から雫が落ちる。
「みんな……。今日は帰るか?」
いつのまにか泣いてないのは誰もいなくなっていた。
「ぞうじよ…」
テトが命を落とし、仲間たちは深い絶望に沈んでいた。
戦いは終わり、世界は平和を取り戻したが、
テトのいない日常が続くことが彼らにとって何よりも辛かった。
ある夜、ミクがふと村の外れにある古びた祠(ほこら)の存在を思い出したそこには「魂を呼び戻す儀式」が伝わっていると言われていたが、
長い間誰もその方法を試した者はいなかった。
ミクはテトを蘇らせるため、その禁断の儀式に望みをかけ、
仲間たちと共に祠へ向かうことを決意する。
祠の中は暗く、重々しい空気が漂っていた。
中央には古代の魔法陣が刻まれた祭壇があり、
その周りに並ぶ石像たちがまるで何かを守っているかのように見える。
ミクは手に持っていた巻物を広げ、古代の言葉で記された呪文を唱え始めた。
「これで本当にテトを蘇らせることができるのか……」
リンが不安そうに呟くが、ミクは黙々と呪文を唱え続ける。
彼女の手の中で光が生まれ、その光は徐々に強くなり、祠全体を照らし出した。
「テト……戻ってきて!」
レンが涙ながらに叫ぶと、魔法陣の中心で何かが動き出した。
光の中から現れたのは、淡い光を纏ったテトの魂だった。
彼女の姿はどこか儚げで、今にも消えてしまいそうだった。
「テト……!」
仲間の声に応えるように、テトの魂は静かに動き、彼女の体を形成していく。
しかし、それだけではまだ完全に蘇生することはできなかった。
ミクは深い決意を胸に、渋々と村に戻っていく。
ミクが村に着くと、村の中央にみんな集まっていた。
「ミク、あんたどこ行ってたんだ?俺ら心配してたぜ?」
「カイト…ごめん。古びた祠に手との命を蘇生しに行ってた。」
「…結果は?」
リンがミクの手の中を覗く。
「魂だけなら蘇生できた。けど…体は…。」
「…なあ、お前ら。命の泉って知ってるか?」
ミクの言葉を遮るようにカイトが話し始めた。
「知らない。」
「…実はな、死んだ人の体を蘇らせられるらしい。」
みんなの目に希望の光が宿る。
「方法は?」
「魂に水をかけるだけだ。ただ…命と同等の『何か』が勝手に泉に奪い取られる。」
「それだけ?」
「…あぁ。」
みんなの意思はすでに固まっていた。
命の泉は、命を授ける力を宿していると言われている。
それを使えば、テトの命を取り戻すことができるが、
同時に大きな代償を払わなければならない。
それでも、仲間たちはテトを失いたくない一心で泉を目指し、
険しい山を越え、泉にたどり着いた。
泉の水は澄んでおり、まるで命そのものを象徴しているかのようだった。
ミクはその水を手にすくい、テトの魂にそっと振りかけた。
その瞬間、眩い光が溢れ出し、テトの魂から体が形成されていく。
胴体。頭。腕。足。
それらが揃った時。
テトはゆっくりと目を開け、仲間たちを見渡した。
「テト! 生き返った……!」
リンとレンは涙を流しながら喜び合った。
「私は……生きているのか?」
「そうだ、テト。私たちが君を取り戻したんだ。」
ミクは優しく微笑んで答えたが、その目には疲労と安堵が混じっていた。
テトは仲間たちの犠牲と努力を知り、深く感謝した。
「ありがとう、みんな……」
そして代償として、彼女らの「声」が失われてしまった。
しかし、機械的な声になったとしても、みんなの気持ちは変わらない。
「ただいま。」
「「「「「「「「「「「おかえり。」」」」」」」」」」」
蘇生したテトは、勇者としての役割を終え、
心穏やかな生活を送ることを決意した。
「私は私の城に戻るわ。このパン屋も宣伝しておね。」
ルカは城へ戻り
「私は一度自分の家に戻るけど、近いうちにこの村に引っ越そうから。」
ユカリは自分の家に行き、
「俺は、引き続き村の護衛でもするな。」
カイトは村の護衛をし、
「じゃあ僕たちは一度魔王城に戻るけど、いつかこの村に城を持ってくるのだ!」
ずんだもん、ウナ、アオイ、アカネは魔王城に戻り、
「さて、世界も平和になったし、私はパン屋でも開こうかな。」
リン、レン、ミク、テトは村に戻り、
パン屋を開き、平和な日々を過ごすことにした。
時折、仲間たちが店を訪れ、かつての冒険の話に花を咲かせる。
テトの心には、もう一度命を取り戻したことで得た新たな決意が宿っていた。
それは戦いではなく、人々の日常を支えるという静かで優しい使命だった。
「これで、みんなが幸せになれるなら、それでいい。」
そう言って、4人は今日もまた、みんなのためにおいしいパンを焼いていた。
このパン屋は『勇者のパン屋』として有名になったり、
11人でバンドを開いたりするが、 それはまだ先の話……。
終
ドリル無双。 十八万十 @pikomyou
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
参加中のコンテスト・自主企画
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます