第60話
ヨーロッパを放浪してるとき、彼はふと思い立った。
「なんかさー、アジアの民族に興味あるんだよねー。でもうちの大学では研究してないからさぁ、辞めるわ」
「え?で、でも子供…綾もいるでしょ?お金どうすんのよ」
「そんなんなんとかするぜ」
「えー」
私は、大変な人についてきてしまった。でも後悔しても遅い。アジアを旅することとなった。
「綾、お友達と遊ぶのはいいけど、お勉強しないと」
「やだよ。それよりママは中国語なんでそんな下手なの?」
やだやだ、うちの子。誰に似たのよ!
「まーや!俺はひらめいた!」
私と子供を都心に置いてったやつは、きらきら輝いて帰ってきた。どこかの山にいたみたい。
「はぁ?なにを?」
「店を開こう!まずは東北攻めるか」
「は?日本?」
「奄美は俺の出身地だからー北から!」
「なんで、え?」
「綾も日本に行ってないしな!あ、俺の妹にも会わせたいしー」
「なにそれ!妹?いたの?」
振り回されながらも、日本へ帰り細々とお店をはじめた。のはいいけど…彼は放浪癖がついたのかいつもうろうろする。まじでなんなのよ。
「妹に会わせるんだったな!」
それ言ったのいつよ!ってときに思い出す。奄美へのお金はどうすんのよ。ということで、貯金を始める始末。なんにも考えてないじゃない!と思ってたら店を移転するとか言い出して。資金はある…意味わからん!
やっと妹さんと会うと、私とそんなに変わらない風だった。
「お兄ちゃん!」
「見ろ、うちの家族を。いいだろー」
「お世話になってます。兄がいつも迷惑かけて…」
「いえ、なかなかお会いできなくてごめんなさいね」
妹いることすら知らなかったし。
「お兄ちゃん、バイトしてるから学費少しは払えるよ。家族に使いなよ」
「おうよ。そうする」
え、妹さんに仕送りしてたの…?
あ…施設育ちって言ってたよ。私…自分のことばっかり。
「いるか、ちゃんと勉強しろよなー?」
「言われなくてもするから!てゆーか子供いるとか聞いてない!」
「あー、海外にいるときに出来たのさ」
「お兄ちゃん信じられない。苦労したでしょ?大丈夫?」
そっか。あなたは、たくさん考えてんだね。
妹さんのことまで。
「大丈夫、いい子に育ってるよ。私の名前からとった綾と響きから真矢って名前なの」
「お兄ちゃん、めろめろだね〜」
「なんせ真綾は俺の女神だから!」
「なにそれ、きもい」
「おい、聞いて驚くな?真綾は見ず知らずの俺を救ったんだぞー?聞かせてやろう!」
あなたは、すごい。
素直でやるって決めたらやる。
自分だけのためでなく、みんなのため。
私のこと大切に思ってる。
「私…女神じゃないんだけど」
「いやいや、奥さんは女神じゃーん。私ならうざい客追い出すもんねー」
「だろ?」
「こーんな変な人!」
「いるか、悪口よくないぞ?」
これからも楽しいことが起こりそう。
足助優の日々 えいみ @fukuharaeimi
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