第59話

大学の友達にも挨拶せず、両親ともまともに話してないのに心細い中アメリカへと旅立った。

現地到着後、彼は山奥へとどんどん足を進める。その間、流暢な英語での聴き込みが続いた。この人、頭いいのね。

そんなことをしていると、どこかしらの民族らしき人達と出会い、なぜだか行動を共にすることになった。彼らと何日もかけて、北へと徒歩で目指す。わけわからん!けど、彼から説明を聞いてもわからない。くじけそうなとき、私をみんな支えてくれた。何語かもわからない言葉を話すけど、私を励ましてくれてる。


「まーや」


みんなそう呼んでくれる。彼がそう呼ぶから。


「まーや、俺料理のレパートリー増えちった!」


「よかったね」


「すごいよな。昔からの知恵というものは…さすがだ」


「あなた、すごいね」


「ふふん!楽しい。なにもなくてもこんなに楽しいんだ」


自由な人。目的地に着くころには、彼はその民族たちの言葉すら理解していた。凄まじい…。


「日本に帰ろうか」


「え、なんで」


「レポート提出しろってさ!」


ホテルのフロントで、いつの間にか電話してた。お金は教授からもらっていたらしく、難なく帰れた。でも、帰ったって私の居場所ないんだよ…。


「よっ!帰ったぞー!すっからかんじゃーい」


日本を出て、まだ半年くらいしか経ってない。あんなにいろいろな経験をしたというのに。大学の方達は全く変わってない。


「花田、あ…女神」


「こ、こんにちは…」


「女神の両親がうちに何度も来たぞ?花田、お前ってやつは」


「なん?」


「うちの親?」


「花田の名刺を見て来たんだと」


「え、あなたいつの間に」


「あぁ、一応置いといたやつな?」


「女神、すっかり親密だな…。で、ここに来てあいつはどこだ?と」


「そんで?」


「海外で研究中で彼女も連れて行ったと話すと驚かれた。んで、花田の研究資料もろもろ公開した」


「ほんで?」


「うちの子には釣り合わない。彼は優秀すぎて…申し訳ないだと」


「え、ひどい。私がバカってこと?」


「まーや、俺はちょい忙しいから無理だけど、両親に会ってこいよ」


「うん」


家に帰ったところ、両親に泣かれた。

真綾、お前はどこに行ってたんだ?怖い人に襲われてないか?怪我はないか?野宿してないか?私は迷わず言った。彼がいればどこにでも行けるの。


真綾、お前…

生き生きしてるな。


そう、私は今、怖がりながらも新しいものを求めて、それを楽しんでる。最高にスリルがあって、楽しいの!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る