点となって滅するの
みかみ
一話完結
あなたや私は、寂しい生きものだと思う。
誰にも何にも、永久に寄りかかることはできないから。
あなたや私は、苦しんでいると思う。
どんなに傷ついていようとも、自分の足で立ち続けるしかないから。
そうやって、みんなが独りで、そっと立っているのがこの世界のありようなのだろう。
けれど、なのにちっとも悲しくないのは、例えば 大きな大きな杉の木が、風に揺れてごうごうと鳴りながら、あなたや私に覆いかぶさるほどの圧倒的な力を放っているとき。
あなたや私に吹きつける冷たい風が、体の中にくすぶっている黒い何かを攫っていったとき。
よろめいた私の肩が、あなたの肩にこつんと当たったとき。
ああそうか。私はたくさんの生の中にいて、私は巨大な生を形作る一つの点でしかなく、そこには確かに、そこにある生の分だけ、たくさんの形と、温度と、呼吸と、苦しみと喜びがあって、私はその中に埋もれているのだと確信できるからなのだろう。
手を伸ばせば触れる。歩けば攫われる。よろめけばぶつかる。誰かに、あるいは何かに。
生まれ出でろ。
伸びろ。
滅びろ。
そしてまた、生まれろ。
そんな命令が満ち満ちている世界の中で。
100年さき。
1000年さき。
この場所でまた立つとしましょう。
例え、血と骨と肉をまとわぬ姿になっていようとも。
いつかまた、一つの小さな点となって、会いましょう。
~おしまい~
点となって滅するの みかみ @mikamisan
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