第44話 またしても黒鵜(くろう)の仕業
1月20日、月曜日。
県立博多学園高等学校……
父親が用意した書類で事前に転入手続きは終え、また学力検査も行って合格し、制服も届いて晴れて高校生の仲間入りをした訳なのだが……。
「皆さん、知っての通り今日から新しい仲間が入ることになりました。
女の教師に言われて彼は登場する。
「
彼は出来るだけ波風を立てないような立ち回りを心掛けるが、
第1印象が悪くなるとその他全てが悪く見える。クラスメート全員が敵意を向け、拒絶の感情が広がっていた。
特に「はるばる関東からやって来たよそ者」という出身なだけあって、それが余計に冷たく扱われる要因でもあった。
「オイ」
ホームルームが終わるといかにも
昔懐かしの「番長」という風体のクラスメートが、座っていた
「
俺のクラスメートに手を出したらタダで済むと思うなよ。無事に卒業したければ余計な手出しをしない事だな」
「いや、オレも手出ししようなんてことはしないさ。平和的に行こうじゃないか」
「フン、どうだか。関東の人間は信用ならんからな」
船城高校やその次の高校では地元というだけあってまだ馴染みがあったが、ここは北九州は博多。
コネも血縁も無い孤立無援の場所、そこでいきなり初対面の
「ねぇ聞いた? 転校生の
「ええ? 私は彼女を捨ててやって来たって聞いたけど?」
「噂話」というのは「中心から」今回のケースでは「
それが「噂が噂を呼ぶ」となって彼のイメージは徐々に、だが確実にねじ曲がっていく。
「彼女がいたらしい」という事実が「彼女を捨ててやってきた」という噂にすり替わるように、噂話が徐々に悪い方へ悪い方へと肥大化していくことになる。
転入してから数日後の授業中……。
カラン、カララン。
「鉛筆、落としたぞ」
「フン、人を3人も殺してる人殺しなんかに、俺の鉛筆を触らないで欲しいな。ケガレちまうだろうが」
「!? ちょっと待て! オレは人殺しだなんてしてないぞ!?」
「隣のクラスから聞いたぞ? お前、人をいじめで3人殺してるって。みんな噂してたよ」
「ふ、ふざけんなよ! オレは人殺しだなんてやってないぞ!?」
その授業が終わった休憩時間、
「どこのどいつだ!?『オレが人殺しをやった』っていう噂を流したバカヤロウは!? 今すぐ名乗り出ろ!」
教室に突撃するや否やでかい声で怒鳴る。教室が突如の怒号でシン、と静まり返る。
大抵の生徒が彼を見ている中、そのクラスのカースト1軍の男子生徒が彼に敵意を向けながら声をかけてきた。
「お前が噂の
「ふざけんなよ。テメェが噂の大本か? 勝手に人様の事を人殺しにするんじゃねえよ」
「オレは人を殺してるんだから今更殺した数が増えたところで何とでもない、と来たか。噂通りだな」
「その噂のせいで迷惑してるんだよ。聞いた話じゃこのクラスがその噂の発信源だそうだ。責任取ってもらおうか?」
「『火のない所に煙は立たぬ』って言うじゃないか。そういう噂が流れるって事はそれだけ酷い事をしていた事の証なのでは?」
「口だけはベラベラと喋りやがって……」
お互い1歩も譲らず、
「オイ
「!! お前は!」
それを破ったのは
「何でお前がこんなところに!?」
「さっきバカでかい怒鳴り声を上げただろ? あんな声出せば誰だって気づくものさ。
お前の噂は聞いてるよ、人が死んだ死なないって話が出て来る所まで
「……」
かつて中学在学時にはクラスメートを3年間いじめ続け、高校在学時にはクラスメートをナイフで刺して退学した。
という
「
彼はクラスメートに首元をつかまれ、自分たちのクラスへと引きずられていった。
次の更新予定
フクシュウ狂ヒ あがつま ゆい @agatuma-yui
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。フクシュウ狂ヒの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
参加中のコンテスト・自主企画
同じコレクションの次の小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます