第16話  エピローグ

 ぽん太とこの葉の終焉の地は北町番所内であったが、後の世に期しくも夫婦として住んで居た長屋のあった須田町の裏手神田川の土手沿いに、狸を祀った神社柳森神社がある。

 これは旧は五代将軍の御生母ごせいぼ桂昌院けいしょういんが江戸城内に福寿稲荷ふくじゅいなりを創建したものだが、京都は八百屋の娘がいてたま輿こしに乗った幸運にあやかろうと奥女中おくじょちゅうらがおたぬきさまを崇拝したもので、後に向柳原むかいやなぎはらの旗本屋敷内に移り、更には現在地にある柳森神社やなぎもりじんじゃ合祀ごうしされ、勝運、金運、出世運などに御利益ありとされ、更に面白いことにその隣には冨山町にあった幸神社が合祀されて此方にはキツネがまつられているのである。


 さて神社の社殿の前の台座には神獣しんじゅうである狛犬こまいぬが乗っているのが一般的だが、此処柳森神社はたぬきが台座にて迎え、幸神社はキツネが迎えて呉れるのである。

 それらの内キツネの神獣は美形で左手の狐は子狐を護り、右手の狐は宝珠ほうじゅと言って、豊穣や繁栄を象徴するたまを護っているようだ。

 その狐の表情からすると木の葉のように思えないこともない。

だとすると柳森神社の台座に座るたぬきは、ぽん太と言えるようだ。

                         完













起稿 二〇二四年七月三日

 脱稿 二〇二四年九月三日

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ぽん太とこの葉の気紛れ歳時記』 夢乃みつる @noboru0805

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