『22:50 に起きたこと』は、愛と憎しみ、執着と絶望が絡み合う複雑な人間模様を描いた物語やで。百合や武藤、美里を通して見える「理想と現実の衝突」が、心に残るほろ苦さを持っとる。登場人物たちはみんな不完全で、その不完全さがまるで私たち自身の弱さを映し出してるみたいやった。
物語の構造は断片的な視点の移動が特徴的で、過去と現在を交錯させながら、登場人物の背景が徐々に明らかになっていく。この手法が、読む側に緊張感と深い感傷を与えて、ページをめくる手を止められへんくなったわ。
ただ、この物語は甘さよりも苦さが際立っとる。「救いのない現実」を突きつけられる展開は、読む人にとって重いと感じるかもしれん。それでも、その苦さがこの作品の魅力であり、深く考えさせられる部分でもある。
作品全体に漂う不穏な空気と、静かに押し寄せる悲劇は、「自分の選択がもたらす結果」というテーマを強く読者に投げかける。読むときは、しっかりと心の準備をしてほしいけど、読み終わった後には確実に「何か」が心に残る、そんな作品やったで。
ユキナ(ほろ苦)☕
構成の凝ったミステリーを見ると、思わずニヤリとしてしまいます。
映画でも小説でも、時間軸が変わった感じになっていたり、設定が特殊だったりする話を見ると、「最終的にどんな仕掛けが作動する?」と期待に胸が膨らむものです。
この作品もそういう風に、「未知の体験」を味わわせてくれる代物でした。
ある日、主人公の美里がアパートに帰ろうとする。そこでなぜか嘔吐している男を見つけて声をかけるが、「触るな」と言って拒絶されてしまう。
全10話で構成されるこの作品では、一話ごとにこのやり取りが毎話挿入されるようになっています。それと共に、その前後の時間で、それぞれの人物のやり取りが行われ、断片的に「何か」が見えてくるようになるという。
同じ場面が連続して登場することで、時間がループしているような、言い知れない迷妄感を味わうことになります。その中で漠然と見えてくるなんらかの真相。覚めない夢の中をさまよっているような、特殊な読書体験をすることができました。
ミステリー好きならば、是非とも読んでみるべき作品です。