構成の凝ったミステリーを見ると、思わずニヤリとしてしまいます。
映画でも小説でも、時間軸が変わった感じになっていたり、設定が特殊だったりする話を見ると、「最終的にどんな仕掛けが作動する?」と期待に胸が膨らむものです。
この作品もそういう風に、「未知の体験」を味わわせてくれる代物でした。
ある日、主人公の美里がアパートに帰ろうとする。そこでなぜか嘔吐している男を見つけて声をかけるが、「触るな」と言って拒絶されてしまう。
全10話で構成されるこの作品では、一話ごとにこのやり取りが毎話挿入されるようになっています。それと共に、その前後の時間で、それぞれの人物のやり取りが行われ、断片的に「何か」が見えてくるようになるという。
同じ場面が連続して登場することで、時間がループしているような、言い知れない迷妄感を味わうことになります。その中で漠然と見えてくるなんらかの真相。覚めない夢の中をさまよっているような、特殊な読書体験をすることができました。
ミステリー好きならば、是非とも読んでみるべき作品です。