第1話
「ーーおい!何寝ているんだ、早くたて!!」
そんな怒号が耳に鳴り響き、反射的に起き上がった。
「?!」
「ふんっ、やはり寝ているふりだったか」
見れば大柄の男ーーではなく、父さんが木刀をこちらに向けていた。
そうだ。今は剣の修行中。
模擬戦をしてボコボコにされたんだったーーそれで吹き飛ばされて気絶してて‥‥あれ?
それだけだったっけ?もっと何かあったような。
「起きたんなら続きだ、俺の剣を防げるようになるまでやるぞ」
そういうと父さんは地を蹴り、一瞬で距離を詰めてきた。
「うおっ」
体が自然に受けの構えをとるが相手の方が圧倒的に強いため、また後ろに吹っ飛ぶ。
「少し防げるようにはなったようだが‥そんなんでは本家には到底及ばないぞーー聖騎士が第五使徒を目指しているんじゃなかったのか?」
――聖騎士?
その言葉を聞くと頭が痛くなる。
「スキルはまだ教えてないから仕方ないからとか考えてないだろうな?魔神ステラ様だって剣を極めていたのだ、魔法に頼り切りになるな」
ステラ、魔神ステラ?
いや、違う‥あいつは魔帝ステラで僕はーー
「もう一度だ、今度はもう少し強めに行くから死ぬなよ?」
また父さんが目の前に現れて剣を振る。
いつもなら防ぎきれずに喰らってしまうのだが。
「っ!」
すぐさま相手の剣に対面するように構えて、受け止めた。
「?!」
思い出した。
僕は、俺は神聖帝国が十二騎士――剣帝シウス。
そうだ、それで皇女様を守ろうとして――――守れなかった。
その一言が頭に浮かぶと同時に今までの記憶が頭に流れ込んでくる。
聖魔や神聖との戦闘‥‥そして自身が築き上げた剣の極地。
そうか、俺転生したんだ。
「おい、聞いてるか?」
「え、あ、はい!」
記憶を整理していると父さんに声をかけられた。
「剣は受け止められるようになったみたいだが――ちゃんとステリア流でやれ、今のはどこで見た剣技だ?」
ステリラ流ーー魔帝ステラが使っていた剣技を流派としたものだろう。
「えっと、体が勝手に」
「そうか‥‥まぁ、実戦を考えるならそれでいい。だが来週の剣術大会ではステリア流でやれ――本家の人間に合わせないといけないからな」
「はい」
本家‥‥そうか、ステラあの後結婚したのか。
一応父さんは準本家らしいのだが‥ステラの面影がないのは数百年経っているからだろう。
それと剣術大会。
10歳になった貴族子息が聖教国家の王女たちと初めて会う場所。
つまり誰の騎士になるかを決め、将来の主に対して自分の腕前を見せる場所である。
そして自分のスキルを初めて知らされる場である。
なぜ最初に教えないかというと、スキルを使用しない状態の剣術を教えるため。
これは神聖帝国でもそうだったため、良い伝統は取り入れるというやつだろうか。
「今日の訓練はこれで終わりだ‥これから領地視察に行くから昼食は先に食べてろ」
「はい、父上」
気が緩んだのか、体の端々から痛みを感じ始めた。
子ども相手に容赦もないな。
いや、むしろ愛情か?
それにステリア流と言ってはいるが、ステラは魔法中心の戦い方で剣技はそれほど強いわけではない。
本人も「剣がなければ魔法を使えば良いじゃない」といっているほどだし‥‥いつもだらけているステラが神格化されて魔神になっていると思うと笑えてくる。
「はぁぁ」
自分の部屋にある大きめのベットに倒れると、転生したことを思い出したせいか疲れがかなりあることに気づいた。
「これからどうするべきか‥‥」
このままステリア流を極めながら騎士ーーになろうにも、俺の主人は皇女様1人だけだ。
それにとてもじゃないが聖教国家の人間を守る気は起きない。
「貴族ってことはスキルはあるんだな」
前世にはなかったスキル。
せっかく貴族に転生したんだ、なんのスキルか気になるしーーそれにもしかしたら転生したのは俺だけではないのかもしれない。
それにこの世界を旅してみるのも良いかもしれない。
皇女殿下に祝福を!〜帝国最後の騎士は今世でも皇女様の騎士です〜 いつきくん @yuiyui1945
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