攻撃に振りまくっている野郎どもの対戦
いちのさつき
互いに攻撃メインだと、すぐ終わってしまう
身軽な男が先に動いた……というより、聖騎士専用の術詠唱を開始した。坊主はそれを阻止しようと、槍を持って突進してくる。
「光の女神に」
男は左腕を前に出し、姿勢を低くし、防御の構えをする。何もなかった左の前腕に木の盾が出現する。
「フェイクか」
坊主は舌打ちをしたものの、とっくのとうに加速しており、急に止めることが出来ない。それでもワザと外すことぐらい、坊主にとって造作もないことで……。
「一撃で仕返ししてやろうと思ったんだけど」
今度は身軽な男が舌打ちをした。坊主は相手の盾に突くことをせず、身体を捻って方向を無理やり変え、地面に衝突する。ド派手な土煙と共にターンをし、見えないところからレイピアに似た素早い突きを何度も繰り出す。
「シールド・パニッシャー」
身軽な男は瞬時に攻撃を見抜きながら、所持するスキル名のひとつを宣言する。上空及び側方から、透明の盾が出現し、坊主を圧迫して押しつぶそうという作戦だ。
「なるほどな。甘いってんだよ!」
坊主もスキルを発動。持っていた槍の本数がひとつから十数も増え、透明の盾を物理的に破壊する。硝子のような割れる音と粉々になった盾で、坊主はニタリと笑う。
「手数は俺の方が上だ」
増えた槍を浮かして、素早く身軽な男に当てようとする。四方八方から槍が飛んでおり、男の逃げ場はないに等しい。
「舐めるなよ」
低い声を出す身軽な男は防御をひたすら上げる。限界値まで上げまくる。
「おいおいおい。正気か?」
察した坊主は信じられないという目で相手を見る。
「攻撃は最大の防御。俺のメインジョブの聖騎士の固さを舐めるなよ!」
「そうかよ!」
飛ぶ槍が当たっても、男のHPはそう簡単に減らない。カキンカキン。ぶつかる音を鳴らしながら、槍を跳ね除け、拳で坊主をKOしようとする。右の拳に白くて神秘的なオーラが纏い始めている。坊主は改めて突くような構えをし、メインの槍が青白く光る。
「正義の拳!」
身軽な男は拳で振り下ろす。
「滅妖だああ!」
坊主は甲高い声で強力な突きを繰り出す。どちらも火力の高い技として有名だ。同時に使うとどうなるのか。どれだけバフがあったとしても、互いにHPがゼロになる。それが答えだ。
実際、この対戦は白く眩しいフラッシュと周辺を巻き込むような物理破壊と共に、終わってしまった。
攻撃に振りまくっている野郎どもの対戦 いちのさつき @satuki1
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