第27話 (第1章最終話)あまりにも凶悪な、スキルの真価。
僕たちは戻ってきたくるみちゃんから、銀河くんたちが明日には戻ってくるという報告を受けていた。皇子ちゃんは今日もあっちにお泊りらしい。アリアちゃんとの絡みは喘ぎ声がすごかったらしいけど、こっちにいる時ってあまり気にならなかったよね? どうしてたんだろう?
僕たちは、日中は割とゆっくりと過ごした。詩織ちゃんのところに行って日課の『奴隷売買』をこなしたあと、専売所に行ってこの前の千奈津ちゃんと遥香ちゃんが上層で無双をしたときの魔力石の代金を受け取る。
おお……これで僕たちの共有資産は金貨500枚を超えた。すごすぎだろう、2人の稼ぎって。98%割引だと、金貨25,000枚、つまり25億円分まで買い物が可能だ。まるで、有名ユーチューバーの豪邸の金額みたいだ。
道中で千奈津ちゃんとウィードさんがニコニコ顔で歩いているのを見かける。「あっ、タクミくん。ちょっとカナレさんと3人で殺り合ってくるねぇ♡」と手を振ってくれるのは良いんだけど、字面が嫌すぎる。
そして道中で、初対面の美人なお姉さんに呼び止められた。えっ、エルフ? 周りの人も珍しそうにしている。ボンキュッボンのスタイルの良いボディは、普段着からでもよく伝わってくるし、金髪に特徴的な長耳……美人すぎていうことがない。
「ねぇ、あなた」
「はい、僕ですか?」
「ごめんね、急に呼び止めちゃって。あなたのことが気になったものだから」
えっ、こんな美人なエルフさんに気にされるって何だろう? ちょっとドキドキしてしまう。エルフのお姉さんは、しげしげと僕を見つめながら、お上品に舌なめずりをした。その仕種だけでいけない気持ちがこんにちはしそうなエロス具合だ。
「すごく珍しいスキルを持ってるのね? 『性豪』に『主従契約』……『値引き』? 初めて見るスキルだわ」
スキル読み? 僕の背筋をぞくりと警戒信号が走る。他人のスキルを知ることができるスキルはとても貴重であり、それだけに危険だ。
「あら、ごめんなさいね。他意はないのよ。『性豪』持ちの人と出会えるなんて、つい嬉しくってね」
エルフのお姉さんはにこやかな表情で、敵意はなさそうだ。でも他国のスパイならお手の物だろう……油断はできない。
「本当に他意はないのよ? 名乗ってなかったわね、私はラスティ。夢幻通りにある『夜蝶』という娼館で、娼婦をしているの」
あけすけに自分の職業を明かしながら、お姉さんは微笑む。そう言えば『夢幻通りの高級娼館にはエルフのお姉さんが入ったらしいな』って御堂くんが以前に話していたな。それがこのお姉さんなのか。『夜蝶』か……僕でも知っている、マクガレフでも最高級のお店だ。ちなみにマクガレフの風俗産業は、かなり発達している。
「もちろん、あなたのスキルのことを誰かに話したりはしないわ」
「あっ、はい……でも『性豪』って? あ、本当だ。僕に性豪スキルが備わってる……『主従契約』って、何だこれ」
お姉さんに指摘されたことで、僕にも急速に自覚が芽生える。後天的に新しく増えたスキルは自分でも気づかないことがあるって聞いてたけど、本当なんだ。
「あら、無自覚だったのね。ねぇ、『性豪』持ちと一戦交えたいのよね……女遊びに来るお金がないなら、お姉さんと火遊びしてくれない?」
えっ、つまりプライベートで僕とセックスをしたいってこと? こんなエロいエルフのお姉さんと? あまりにも異世界らしい展開に、思わず即答してしまいそうになる。
「えぇ、服越しでも分かるわよ、そのすごさが。本当は今からでも連れ込み宿でお相手したいけど、あいにくと出勤が近いの。これ、私の個人的な連絡先用の符丁だから。裏口からチップごと渡してくれれば、きちんと私に届けてくれるわ。午前中ならゆっくりとセックスできるから、よろしくね……『性豪』さん♡」
言いたいことを言うと、お姉さんは行ってしまった。まさしくエロフ。こんな繫がりができるだなんて、ラッキーすぎないか、僕。
そして僕は雑用を終わらせて拠点に戻ると、抱かれたがってきたリラちゃんと愛し合った。Jカップのお山は今日も魅力満点だ。1回だけという約束だったけど、回復が早いせいでついつい3回もシてしまった。
まぁ、出かける前は日花里ちゃんともシたしね……精力回復薬のおかげと思っていたけど、『性豪』なんてスキルもついていたとは。男の憧れみたいな名称ではあるけど、面と向かって女性に『性豪』と言われたのはちょっと気恥ずかしかった。
********
夜になり、僕たちはいつもの『奴隷売買』をするために集まった。金貨500枚が手元にあるので、まずは千奈津ちゃんに売買を持ちかけてもらう。
「私はタクミくんの奴隷になりたいんだよねぇ。だから、金貨25,000枚で私のことを買って、奴隷にしてくれないかなぁ?」
「うん、良いよ。98%割引だから、金貨500枚で良いかな?」
「もちろん、良いよぉ。今日も私はタクミくんの性処理用の奴隷として、あんなことやこんなことをされちゃうんだねぇ……♡」
今日の夜は千奈津ちゃんがお相手の予定だ。間違ってはいないんだけど、表現の仕方が誤解を招きすぎる。
「はいはい、じゃあキャンセルするね……あれ、できない?」
キャンセルをしようとした僕の目の前に、『警告』というメッセージが表示される。
いや、その前にもメッセージがたくさん表示されている。
〔金貨20,000枚を超える取引が実行されました。条件を満たしました〕
〔熟練度が99%に達しました。条件をすべて満たしているため、隠しスキル「認識阻害」が実装されます〕
〔認識阻害のステータスを常時発動に設定しました〕
〔認識阻害の効果が発動中のため、取引をキャンセルできません〕
〔キャンセルをすると、*********がすべて解除されます。それでもキャンセルを実行しますか?〕
赤文字のメッセージに慌てた僕は、頭の中でキャンセルを取り下げる。
「……あ、あのね。熟練度が99%に到達したみたいだ。それで、隠しスキルも発現したみたいなんだけど……」
僕の報告を聞いた女子たちから、わぁっと歓声が上がる。
「やったね、タクミくん! それで、どんなスキルだったの?」
「えっとね、それが『認識阻害』ってヤツみたいで……千奈津ちゃん、何か変わったことはない?」
「えっ、特に変わりないよぉ? 私はタクミくんの奴隷だしねぇ♡」
うーん、まだよく分からない。スキルの効果についてはいろいろと検証する必要がありそうだ……ただ、問題がある。『キャンセルをすると、*********がすべて解除されます』、この*********が伏せられているせいで、キャンセルがしづらい。もしこれで、これまでのスキルの熟練度を失うことになれば、すべてが水の泡だ。
「……もしかして、キャンセルできない副作用があるんじゃないの?」
僕の顔色から察した日花里ちゃんが、尋ねてくる。そう、戦闘系でないスキル、特に強力無比なスキルには弱点がありがちだ。
「……うん、そうなんだ。ごめんなさい、千奈津ちゃん。君との奴隷売買をキャンセルできない」
「それは良いよぉ。だって私、タクミくんの女だし。嬉しいねぇ、私はタクミくんの所有物になったんだねぇ。一緒に奴隷ライフを満喫しようねぇ、千雨」
千奈津ちゃんはまったく気にする様子がなさそうだ。逆に、ここにいる日花里ちゃん、リラちゃん、遥香ちゃん、くるみちゃんの4人が血相を変える。
「待って、タクミくん。私たちもタクミくんの奴隷にして」
「そやねぇ、うちらも奴隷にしてくれんと、釣り合いが合わんくなるよなぁ」
予想外の申し出に、僕は戸惑う。いや、奴隷契約の意味合いってちゃんと分かってる? 僕としては土下座して千奈津ちゃんにお詫びするつもり満々だったんだけど。
「待って。何があるか分からないから、とりあえず色々と検証してみないとまずいって。日花里ちゃんたちの気持ちは分かったけど、落ち着いて」
まぁとりあえず、詩織ちゃんの読み通りに、僕の値引きスキルは熟練度が99%に到達したところで、隠しスキルが発動した。これがどれほどの効果を持つかが分からないけど、詩織ちゃんの隠しスキルが発生したときの経験を踏まえても、相当な効果が見込まれるだろう。『認識阻害』という名称からして、推察できるところはある。
「良かったね、タクミくん。私もちょっと前にスキルが成長したんだけど、ぜんぜん役立たずで……身体能力の向上に効果がありそうな名称なんだけどね」
日花里ちゃんの言葉に、引っかかるものがある。日花里ちゃんは売買価値が25億円を超えたカンスト組だ。僕みたいな隠しスキルかと思っていたけど、大した戦闘能力を持たない日花里ちゃんにそれだけの価値があるとすれば、そのスキルが怪しいのでは?
「ねぇ、日花里ちゃん。そのスキルって実はものすごい価値があるものなんじゃないの?」
「えっ、私もそうは思ったんだけど、本当に何も起きないんだよ? 不随意に発動して、ステータスを底上げするタイプなのは間違いないんだけど」
日花里ちゃんの説明を聞いても、ますます怪しい。
「ねぇ日花里ちゃん、一応、そのスキルのお名前を教えてくれない?」
「でもポンコツな感じだったよねぇ。千雨みたいな可愛いお名前だったけど」
「あっ、うん。『あげまん・極』っていう名前のスキルなんだけどね」
えっ、それって……僕はみんなの顔を見渡す。リラちゃんと目が合った。お互いに『そうだよね?』『多分、そうやわ』と視線で会話をする。
「なぁ、日花里ちゃん。そのスキルな、多分な、上がるのは身体能力やないよ?」
「千奈津ちゃんに千雨が来たのも、迷宮でアギラウスの杖を拾えたのも……」
「もしかしなくても、そうやろなぁ」
「えっ、どういうこと? タクミくんもリラも、正解が分かったの?」
食い気味に質問してくる日花里ちゃんを見ながら、僕は感謝した。思わず、涙が込み上げてくる。
ありがとう、僕たちを救ってくれて。
「あのね、日花里ちゃん。『あげまん・極』ってスキルの効果はね、おそらくは運気を上げて、運勢を変えるんだよ」
僕たちがクラスごとこの世界に転移してから、数年。
ようやく僕たちは生きるか死ぬかの苦境を脱することができた。
そして、僕たちがこの世界を成り上がっていく物語が、とうとう始まる。
【後書き】
第1章はこれで完結です。
ここまでお読みいただき、ありがとうございます。
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なお、20日から新連載を予定しており、準備のために一時投稿作業を中断します。申し訳ございませんが、よろしくお願いします。
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クラス転移で底辺だった僕は「値引き99%」スキルで世界を制する。~お姫様? ダークエルフ? 買います!~ 柚子故障 @yuzugosyou456
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