第26話 銀河くん、とっても強くなったね。

「ねぇ、紫音ちゃん。今日の島崎さんたちの話をどう思った?」


私と身体を重ねながら、銀河くんが尋ねてくる。


「ええ。信じられないけど、千奈津と遥香がすごく強くなったって話は、カナレさんからも聞いているし」

「そうだね。拍子抜けしちゃうところもあるけど、本当に良かったよ」


くるみと皇子、そして御子柴くんと鹿谷くんの4人が私たちの拠点を訪ねてきたのは、夜になる直前のことだ。私たちはとても信じられなかったけど、御子柴くんの口から聞かされた中層の魔物の様子は本物だった。私たちが総力を挙げて討伐するキリングゴーレム、そしてなるべく遭遇しないように気を付けているオパール・ケルベロスも、千奈津の居合の前では易々と切り裂かれていったという。


「早速だけど、日中は準備をして、明日には僕たちの家に戻ろう、紫音ちゃん。そして朝倉さんと一緒に中層に潜って、市民権を買うための金貨を稼いでいこう」


決意のこもった瞳で、銀河くんは私に提案してくる。この方針自体はさっき皆で話し合ったことだけど、改めて私に力強く伝えてくれると、キュンキュンしてしまう。


「本当に、強くなったよね、銀河くん」

「紫音ちゃんのおかげだよ」


小学校の登校班では必ず私の後ろをついて歩いていた銀河くんが、今は私の前を歩いてくれる。私は銀河くんの肌を撫でた。その身体には、新しい傷跡が刻まれている。


「ごめんね、私を庇ってくれて。傷薬じゃなくて回復魔法だったら、傷跡も残らなかったのに……」

「仕方ないよ。あの時は、堂本くんの指の欠損を治すのが最優先だったんだから」


いつの間にか、こんなに逞しくなってくれた。私の愛しい、愛しい銀河くん。凛子の索敵をかい潜って接近してきた増援に不意を突かれた私を、身を挺して守ってくれた。その代償が、このお腹の傷跡だ。


「ねぇ、銀河くん」


私は銀河くんの身体に覆い被さりながらキスをした。銀河くんもそれに応えて私の舌を迎え入れてくれる。温かい唾液を交換しながら、私は銀河くんを見つめた。


「私、銀河くんと結婚したい」

「もちろんだよ。ごめんね紫音ちゃん、こういうことは男の僕から言わなきゃいけないのに。市民権を購入したら正式に結婚しよう、紫音ちゃん」


思わず口をついて出た、こぼれ落ちたような本音だったけど、銀河くんは即座に真正面から受け止めてくれた。


「本当に? 嬉しい、ありがとう、銀河くん……」

「ちょっとムードがないけどね?」


銀河くんが苦笑いする。それはそうだ。こんなことをしながらのプロポーズなんて、聞いたこともない。


「でも、本当に嬉しいよ」

「うん、銀河くん、好き、大好き、愛してる♡」

「僕も愛してるよ、紫音ちゃん」


銀河くんは私の耳たぶを愛してくれながら、愛の言葉を何度も何度もささやいてくれる。


「あっ、待って、銀河くん……っ」

「待たないよ、紫音ちゃん。今日は精力回復薬ももらってるから、たくさん愛してあげる。僕が守られる存在じゃなくて、紫音ちゃんを守ってあげられる存在になったんだってことを、こっちでも教えてあげるね」


そして私は明け方まで銀河くんと激しく愛し合い、銀河くんに支配してもらう悦びに目覚めたのだった。すごく良かったよ、銀河くん。でも、主導権を握るのは一日おきにしようね?♡


********


翌朝、銀河くんと手をつないで食堂に入ると、とっても艶々した表情のアリアと凛子と皇子、そしてげっそりとした感じの男子たちがいた。


「なぁ、お前ら、アレを毎日我慢してたのか? 中層に潜るより、こっちの方が過酷じゃないか?」

「あぁ……でも、昨日は特に酷かった」


御子柴くんの問いかけに吉塚くんが苦々しく答えて、残りの男子もうんうんと頷く。


何のことかしら? そう思っていると、いつも通りのバカップル……加納さん兄妹がいちゃいちゃしながら現れた。


「あっ、おはよう、紫音。昨日はすごかったわね、淫獣の動物園って感じ? 私たちも当てられて、いつもよりハッスルしちゃったよ♡ お義兄ちゃんのプレス、すごかったなぁ……♡」


うっとりとした様子で、小夜ちゃんが頬を染める。加納虎太郎くんも、いつもより疲れている様子だ。


「あら、淫獣って、そんな魔物がいたかしら?」

「いや、お前らのことだよ……あんなに大声で盛っておいて、何を今さら……」


ん? あぁ、そう言えばアリアたちのメス声がうるさすぎたけど、せっかく銀河くんにめちゃくちゃにしてもらってるのを中断するのが嫌だったから、こっちも遠慮なく声を出してかき消したんだった。


「アリア、いけないわよ。もっと慎みを持たないと」

「それはこっちのセリフですよ、紫音。私はメスね……ご主人様を躾け……労わっていただけですよ?」

「明日と言わず、今すぐ帰ろうぜ。止め役がいないと、こっちの身が持たない」


「あぁ、でも覚悟しとけよ。お前らがいなくなった僅かな間に、あっちはあっちで、タクミがハーレム帝国を作り上げている。そこにいらっしゃる島崎さんも、ちゃっかりとタクミのハーレム要員だ。言っておくが、処女はほぼ絶滅した」


「マジかよ。あっちもこっちも、俺たちにとっては地獄じゃねぇか……」

「神も仏もねぇのかよ……あ、こっちの世界には仏様はいないか……」


あらあら。そんなにセックスがしたいなら、お小遣いを貯めて娼館に行けば良いじゃない。私とアリアは顔を見合わせて、お互いに肩をすくめて苦笑いした。


ちなみに最後となったこの日の夜は、邪魔な男子は臨時お小遣いをあげて娼館にお泊りで追い出して、私たち、アリアたち、小夜ちゃんたちは、お互いに遠慮しない全力のセックスを愉しんだのだった。


【後書き】

ちなみに回復魔法は実際には「部分的な時間の巻き戻し」であり、

紫音ちゃんの現時点の回復魔法は「1時間前の状態に復活させる魔法」です。


(1)連発ができないこと

(2)堂本くんの指の欠損は傷薬では治癒できないこと

(3)流血による失血死の恐れがあった


ことから、銀河くんには傷薬が用いられました。蘇生魔法も同じような原理であるとお考えください。これくらいのリスクを背負いながら、銀河くんたちはあえて中層に潜っています。

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