終章
第50話
この世は、『見えない』物で溢れている。
私達は、東のことだけでなくそのことすら忘れさせられていた。あの日、私が全てを思い出した後、東の前には夜半が再び現れたらしい。二十年、霊を恨まずに共に過ごす私を見てきて、更には全てを失っても前向きに生きようとする東を見て。もう充分復讐は果たしたんじゃないかと、多くの霊たちを成仏させ救ってくれて感謝する気持ちになったんだと話したそうだ。ありがとう、自分の魂と引き換えに記憶を返すと言って彼女は成仏していったんだって。
つまり、突如全員に東の記憶が戻ったのは夜半のお陰だったようだ。それでももう私たちに霊を祓う能力はないし何かが見えることもない。東も私達と再会してからはだんだん見えたり聞こえたりしなくなってきているのだと言った。近いうちに全く見えなくなるかもって。血筋は別として、霊って寂しい人に見えるのかも、なんて。今となっては推測でしかないのだけど。
霊のことは何も分からなくて、世界は理不尽で。それでもやっぱり世界は優しくて楽しいというのは間違いないのだと信じられる。
「まあ俺は雪が忘れてももう一回俺に惚れるって信じてたけどね!」
と東はしょっちゅう嘯いた。
「ラブストーリーはハッピーエンドに決まってんだよ」
得意げに顎を反らす彼を、その度にあの日大泣きしながら私に手を引かれお寺に連れてこられたことを知っている進藤さん達が「不安だったくせに!」とばしばし叩く。その真ん中で、東は花が咲くように笑った。
除霊師、始めました。 @NatsunoMarin
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます