No.15 勝負、だね

放課後。

ルカの誘いにより街へ行くことになったジフ。


ルカからは買い物をしようとしか言われていない。放課後だし、制服のまま行っても全然

不思議じゃない。


それに男と行くんじゃないんだ、緊張する必要はないリラックスしていけ!!


「でも変って思われたくないよ〜…」


女子寮の自分の部屋でガチャガチャと服を選ぶこと数十分。散々迷ってはいるが結局みんなの私のイメージは不良。制服だ、制服で行こう。

そして雰囲気を一度体験してからだんだんと私服のバリエーションを見せていこう。

ここは無難に…


「あ、ジフ、遅かったね」

待ち合わせ場所に来た。少し走ってきたが待たせてしまったようだ。これは間違いなく私が悪い。


そしてルカの服は制服だった。


「あっぶない!!!!!!!!」

「なにがー?」


ここで変に私服で行っていたらやたら気合いの入ったヤツと思われただろうし、まるで私が

ルカの事が好きだから気合いを入れて来たと思われてもおかしくなかった!!


「ジフ、大丈夫?」

「大丈夫だった、そんで買い物って?」

「うん、魔道具屋さん」

「魔道具ぅ??」


なんだそれは全く知らない。仕方ないだろ、魔力使えないんだから、行ったことはもちろん無い。


「そこ行ってなに買うの?」


「『フラッグ』の実習、私も箒だった。だけどあそこにあった箒ってなんの変哲もない箒だから、もう少しちゃんとした箒買おうかなって」


へぇ、武器屋、防具屋みたいなもんか。

無いとは思うが、私もなにかサポートしてくれるようなアイテムがあれば探してみよう。


ルカと他愛のない話をしながら魔道具屋に行くまでの道を歩く。まさか自分が友達と喋りながら街を普通に歩くとは思っていなかった。

うむ、いいものだなコレは。

コージロー様様だ。


「ここ、魔道具屋さん」


想像より少し大きい、店内も広そうだし

なんだかブティック店の雰囲気に似ている。


箒はもちろん腕輪、指輪、杖にローブと絵に描いたような魔法使いが来そうな所だ。

少し緊張しつつ入店する。


物にはいちいち金属類が付いてて無駄にキラキラしていてやたら重厚感があり結構高そう、

そりゃ今までの私の視界に入らない訳だ。


「…高そうだな、全部」

「いや、そう見せてるだけ、デザイン重視のお店だからね」


あんまり店内でそういう事は言わない方がいいんじゃないかと思ったがここはいわゆるチェーン店らしい。店員達に睨まれながら買い物をする事にはならなさそうだ。


「あ、これ、かわいい」


なんとも可愛らしい箒だ。競技に使うには少しラブリーすぎる気もするが最後の1つらしい。

ルカがその可愛らしい箒に手を伸ばした。


2つの手が箒の柄を掴む。

「…ん?」


2つ?


『ん?』


薄いピンクのツインテールが特徴的な小柄の少女が箒を掴んでいた。その少女の服を見る。

制服だ。

リオハイムの制服だ。


「…ベタな言い方で悪いんだけどさ、あたしが先に買おう思ってたから離してもらえる?」


「うん、言い分は分かった。ここからが勝負って事だね」


「は?」


あ、ルカは意外と力が強いぞ。


ルカが少女を引きずりながらカウンターへ向かう。

ルカ、見直したぞ。あんた結構気合いの入ったヤツだったんだね。


「待った待った!!ズルよ!こんな勝負の決まり方があって良いはずなーーい!」


「安心して、勝負は色んな決着のつき方があるから面白いんだよ」


「なんの話をしてんのよこいつは!!」


「力勝負でもオッケーって事でしょ」

「あんたも見てないでこいつ止めなさいよ!!」


やたら高い声で私に言う。なんだこの子供は。

タメ口だし、うるさいし、躾がなってないぞ全く。


「はい、2人共手を離しなさい」

今、まさに2人が引っ張り合っている箒がもう

一つ出て来た。

銀髪ショートカットの女がその箒を持っている。制服だ。リオハイムの。


「ハナ!なんでそれ持ってんのよ!」

「店員さんに裏に同じ物が無いか聞いて取って来てもらったんだよ」


この小さいのの連れか。よし、これで丸く収まるな。


「ほら!水色女!もう一個あったってさ!良かったわね!離しなさい!」

「うん、そうだね、良かったね、それはチビにあげるよ」

「チビぃ!?」


まだ続くのかコレが。なんかルカの意外な一面がどんどん出てくるな。


「メッシュのお姉さん、手伝ってくれるかい?」

「お、おう」


───────


店の外へ出る。

小さな少女とルカはお揃いの箒を手に持っていた。

こう見ると姉妹か何かだ。


結果的に言うと私とハナという女が箒を買って2人にプレゼントする、という方法で決着した。


「ウチのチビが悪かったね。私はハナ・ガーランド。そしてこっちのチビはルーチェ・ウルシェラ」

「誰がチビよ!!」


「私らはジフと、ルカ。あんたら見た感じリオハイムの人らしいけどクラス違い?」


「そうだね、私達はクラスAだ」


クラスA、比較的優等生が集まってるらしいというクラスか、どうりで顔も見かけた事ないと思った。

寮では部屋に籠りっぱなしだったし。


「あんたらは知ってるわよ!今度のクラス練習戦の相手のクラスDでしょ!!」


ひしひしと伝わる見下してます感。こんなにも隠さずソレを出している人間は珍しい。


「…ん?」

「え、」

「なによ」


練習戦の相手??


「もしかして聞いてないのかい?今度クラスAとクラスDで『デュエル』の練習戦をやろうって」


「…ジフ、聞いてた?私、ぼーっとしてたかも」


「いや…私も全く聞いてないわ」


コージローあのやろう、隠してやがる…!!

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魔法と教師と化石の右腕 ソゴウ @SO_GO_7979

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