第51話 変わらない日常の尊さ
私たちの毎日は、平凡で変わり映えのしない日々の連続だ。朝が来て、同じように仕事や学校へ向かい、家に帰って寝る――そんな繰り返しの生活に飽きてしまうこともある。「何か新しいことが起こらないか」「刺激的な変化が欲しい」と願うこともあるだろう。しかし、何も変わらない日常こそが、実はかけがえのない時間なのだと、ふとした瞬間に気づくことがある。
たとえば、体調を崩してベッドから起き上がれない日、いつものように動ける日常がどれほど尊いものかを実感する。健康でいられることが当たり前だと思っていたからこそ、その「当たり前」が崩れたときに気づくのだ。「元気に働ける日々」「家族と何気なく過ごす時間」――そうした変わらない日常が、どれほど幸せなことかを。
また、変化や刺激を求めて遠くへ出かけたり、新しいことを追い求めたりすることは悪いことではない。しかし、その一方で「変わらない日常」の中にこそ、心を落ち着かせる温かさがある。家族の声、友人との何気ない会話、いつもと同じ道を歩く時間、好きな本を読むひととき――それらの繰り返しの中に、私たちの心を支える確かなものが存在する。
さらに、変わらない日常は、次への一歩を踏み出すための「安定した土台」でもある。目まぐるしく変わる時代や社会の中で、私たちは無意識に安心できる場所や時間を求めているのではないだろうか。変わらない日常があるからこそ、挑戦する勇気や新しい変化を受け入れる余裕が生まれるのだ。
しかし、変わらない日常の尊さに気づくことは簡単ではない。多くの場合、私たちはそれを「退屈」と感じてしまう。けれども、それは「何も起きない平穏」という、何よりも貴重な時間でもある。災害やトラブル、不安が現実となる瞬間、「何も変わらない日常」がいかに尊いものだったかを痛感する。
では、どうすれば私たちは日常の中にある尊さに気づくことができるのだろうか。一つの方法は、「今、この瞬間を意識する」ことだ。忙しい日々の中では、過去や未来に気を取られてしまい、今目の前にある時間を見過ごしてしまうことがある。しかし、「今、この瞬間」を味わうことで、日常の中に隠れている小さな幸せを見つけることができる。
また、「感謝する習慣」を持つことも大切だ。変わらない日常が続くことは、決して当たり前ではない。朝目覚めて、仕事があり、家に帰る場所がある――それだけで十分に幸せだと感じられるようになれば、日常の尊さが自然と心に染み込んでくる。
さらに、日常に「小さな楽しみ」を見つけることも有効だ。同じように見える毎日でも、少しの工夫や視点の変化で、その日だけの特別な瞬間を作ることができる。たとえば、新しい料理に挑戦してみたり、帰り道にいつもと違う道を歩いてみたりするだけで、日常が少しだけ輝いて見える。
変わらない日常は、一見すると退屈に思えるかもしれない。しかし、それは私たちの心を支え、未来への安定した土台を作る大切な時間だ。そして、その日常が続くことは、実は奇跡のように尊いことでもある。だからこそ、何気ない毎日に目を向け、その中にある小さな幸せや安心を大切にしたい。
何も起きない平穏な日々こそが、人生の中で最も美しく、かけがえのない時間なのだと、私たちはいつか気づくだろう。だからこそ、今のこの瞬間を大切に、穏やかに過ごすことが、何よりも豊かな生き方なのではないだろうか。
権力と思惑が脅かす国民の暮らし 星咲 紗和(ほしざき さわ) @bosanezaki92
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