第51話:旅に出る時は準備をちゃんとしよう

夏の終わり、秋に差し掛かる今日この頃。


こんな日にはのんびりと自分の時間を過ごしたいもので。


「カノイも大人になったことだし、そろそろ王都の剣術大会にでも出てみるかい?」


「嫌です~。」


王都には興味があるけど、剣術大会とか、命がいくつあっても足りないよ!


成績が悪くても馬鹿にされて攻め込まれるかもしれないし、成績が良くても徴兵されるかもしれないじゃん!


嫌だよ~行きたくないよ~、と思っているのだが?


「王都の!」


「剣術大会!」


リボルとヴァイスがノリノリだ~!


どう判断するべきだ!?


行ってみるだけ行ったほうがいいのか!?


いや彼らが死地に送り込まれる可能性があるのだから止めるべきでは!?


「ははは!王都からしたらここが死地みたいなものだからね。無理に徴兵されることはないよ。」


「あ、それもそうか。って生まれ故郷を死地とか言わないでよ!」


怖くなっちゃうでしょ!


よくよく考えるとよく生き延びてきたな。


思えばモンスターにウェアウルフにてんやわんやだったな……。


そんな中に生きている私達が剣術大会なんか出てみろ。


絶対に勝っちゃう!


うーん、でも本人達が行きたがっているなら、送り出すのも親心か。


「いいですかリボル!この大会で勝った方がカノイ様の側近!ですからね!」


「わかってらぁ!ぜってーに勝つ!側近!の座は俺のもんだ!」


おーっと?さてはお外に行く気がないな?


まぁその方が安心できるからありがたいんだけど、側近の話まだ終わってなかったの?


もう普通に二人とも側近でいいよ。


とは、熱くなっている彼らには言えず、話はどんどん進んでいった。


「よし!では引率として私とカノイがついていこう!リボルもヴァイスも、良い成績を残せるよう頑張るように!」


「「はい!」」


「え?……え?」




夏の終わり、秋に差し掛かる今日この頃。


私は何故か馬車に揺られて王都に向かっております。


旅とはなんとも良いもので、適当に食事をとったり、適当に立ち止まって景色を楽しんだり。


いやー旅っていいものですね。


向かう先が王都でなければな!


「マナー教育は一通り終わってる……剣術も人並み以上には……。」


「カノイ?ぶつぶつ言ってても何も変わらないぞ?行ってみれば案外いい場所さ!」


「パパ~!」


そんな暢気な~!


「カノイ!大丈夫だ!俺達だって緊張してるけど楽しみでもあるんだ!」


「カノイ様、僕達が王都に行っても大丈夫なように教育してくれていたじゃないですか。大丈夫です。」


「リボル、ヴァイス……。」


うぅ、頼もしくなって、お父さん嬉しい!


そうだ、皆頑張ってくれていたじゃないか!


いける!はずだ!


「よし!リボル!ヴァイス!二人が優勝するの、楽しみにしてるからな!」


「二人で優勝は無理だな~。」


「優勝と準優勝、ですね!」


カノイ・マークガーフ、12歳、初めての旅に連れ出された夏の出来事である。

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