第23話 かわりなんていないってどういうこと?

 ホームセンターの近くには警察署や消防署もあった。ゾンビが出たらきっとすぐに出動する人たちだ。


 でも、今はだれもいない。警察署にはさかさまになってこわれたパトカーが一台、止まっているだけで、消防署のシャッターのとびらはあいたままでなかに消防車は一つもなかった。


 警官や消防士の制服のゾンビはいないから、きっとどこかちがうところにいるのかもしれない。


 ぼくみたいに助けられた人がいるのかな? ほかにもゾンビじゃない人がいるのかな? ぼくはすごく気になったから、急にしゃべらなくなったあおいに聞いてみた。


 すると、あおいは変な笑い方をして──。


「誰もいねぇよ」


 って言った。


「でも、あおいはだれかさがしている人がいるって」


 さっきそう言っていた。人をさがしてるから、遠いスーパーまで来たんだって。


 あおいは、またタバコを吸う。


「ガキのお前にはまだ難しい話かもしれねぇけど、まだ見つけてない・・・・・・・・ってだけだ。とっくに死んだかゾンビになってると思ってるけど、俺の目で見たわけじゃないからな。俺が人を探してるってのはそういうことだ」


「……その人、生きてるのかな? 死んでたらどうするの?」


「さぁな。そんときの俺に聞くよ」


「ぼくなら、新しいカラダをさがすな。ゾンビはいっぱいいるから、似ているカタチのゾンビを見つけて──」


「代わりなんていねぇんだよ。……俺にとってそいつはな。……さて、着いたぞ。おしゃべりはもう終わりの時間だ」


 ホームセンターの広い駐車場。その真ん中にあおいは車を止めた。


 少し窓を開けて、小さくなったタバコをポイ捨てする。


「こっからが大変だぞ」


 大変、と言っているけどあおいはどこかうれしそうだった。


「俺の顔じゃなくて、店ン中見ろよ、奴らうじゃうじゃいるぜ」


 ぼくはガラス張りの暗い店内を見つめた。車の音に気がついたのか、たくさんのゾンビがホームセンターの入口に集まっているのが見えた。

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ゾンビとボクの供食の日々 フクロウ @hukurou0223

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