おわりに—電脳世界の功罪

 さて、〆の項に入りたいと思う。


———あるとき、こんなことがあった。


 パーティ員の一人が突然席を外し、すこしの間狩りがストップしたのだ。これは比較的初期の頃だったと思う。

「どうしたんだろうね。寝落ちかなあ?」

「え、こんな時間から?」

 などとパーティメンバーで話していると、少したって彼(分身は女性だったが、あるじは多分男性)が戻ってきた。


「すみませんでした」と謝りながら言うところでは、現実世界の彼は学生で、試験前かなにかで、両親に呼ばれて説教をされていたという。

 要は「人生の大事な時期に、勉強もせずに電脳世界などにうつつを抜かしていてはだめだ、もうそこに行ってはいけない」ということだった。


 パーティメンバーは大いに同情し、口々に彼に言った。

「そうだよ。お父さんお母さんの言う通りだよ。〇〇さんは電脳世界なんか来ないで、現実世界でやるべきことをやった方がいいよ」

(ちなみに、リョウはこうではなく丁寧語で話していた)

 彼は「やっぱりそうですか‥‥‥」と素直に納得し、去っていった。

 多分この戦国世界からも、きっぱりと足を洗ったのではないかと思う。


 筆者はよくこの出来事を思い出すが、もちろんその両親に百パーセント同意である。

 たしかにこのような電脳世界は楽しい。いや、あまりに楽しすぎる。

 だからこそだが、若者が人生の大切な時期に、そんなところで溺れていてはイケナイのだ‥‥‥


 あれから幾星霜。


 彼が今どうしているか知る由もないが、社会で活躍していることを心から祈りたい。



   — 完 —

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とある戦国電脳世界の体験 文鳥亮 @AyatorKK

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