かしょ、お
うめきながら、用意していた水でうがいをする。便器に勢いよく吐き出すとぴしゃ、と頬に跳ね返って、慌ててペーパーで拭いた。このキモいペースト状のものが自分のからだから出てきたってことが、未だに信じられない。
当然だけど、吐くのは嫌いだ。
でもコンビニスイーツの新作は毎日出るし、ドーナツもケーキもクッキーもいっぱい食べたい。もしそれを買うのを我慢できたって、多分結局満たされなくて飢えてしょうがなくて、冷蔵庫の中のもの全部たべちゃうんだ。で、またトイレでえずく。
吐くのは嫌いだけど、少し安心する。だらしないあたしを全部無かったことにできる。甘いものを食べる一瞬と体重計に乗る一瞬だけがあたしを幸せにしてくれるからどっちも捨てられないままでいる。
吐瀉物といっしょにあたしの全てが溶け出して、トイレに流れて行ってしまったらどんなに良いだろう、透明になって、醜いあたしの顔とか心とか欲とかプライドとかぜんぶなくなってくれたら、きっとあたしだって普通になれるのに。
明日はチョコケーキをたくさん食べようって決めている。
無音図 心沢 みうら @01_MIURA
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