第2話 霧の世界

——ザァザァザァザァ


 波の音響く港の桟橋に立っていたのはゼロ・エルメス。手ぶらで杖だけ片手に持ち厚い上着を着ていた。そして、遠くから近付いてくる帆船を眺めているのであった。


 ゼロが帆船に乗り数時間ほどたった頃。目的地である1つの大陸にたどり着くのであった。しかし、降り立つのは彼一人。そして、港からでる時も係員に呼び止められるのであった。


 「本当に行くのか?もう、君の知ってる所ではない」


「でも……行くんですよ」


そう言い少し間を空ける。そして、強く決心したように言うのであった。


「最強の魔法使いなので」


その言葉は狭い入り口に響き渡るのであった……


 踏み出すと舞い上がる砂埃や灰。目の前の景色は荒れ地になっており、更に黒くくすんでいた。その惨状は、昨今報道されてきた「霧」の被害と一致していた。そして、それを知っている彼は何故この地に足を踏み入れたのか……。それは、彼だけが知っていることであり誰も知らないのである。ゼロはその状況を見て、鞄からガスマスクを取り出して口元に当てる。一応魔法もあるが常時だと疲れるためツールを使っていた。そして、静かに歩き始めるのであった。


 歩みを進めても景色は変化しない。一応入手した情報だと、王国は無事らしい。なにやら、協力な結界を作ることに成功したとかなんとか……。しかし、本当に大丈夫なのか?と思い視察もかねて彼は王国に向かうのであった。



「はぁ~。まっすぐ行かせてくれよ」


歩き始めて1時間後。彼の目の前に1体のナニカが現れた。魔物ではなかったし、仮に魔物だとしてもその形は異形であった。しかし、戦う気力がでないために彼は遠距離魔法で仕留めようとするのであった。


「すまないけど。生憎戦う気力が無いんでね」


 そう口から溢して火が付いた杖を持ち軽く振るうのであった。すると、火が付いた杖から斬撃のように炎が飛んでいき、異形に当たると鈍い音を出して斬るのであった。真二つになった異形は蒸発するように煙を出しながら消滅していくのであった。


「見た目の割には全然だね。」


 笑いながら消滅している偉業を通りすぎるのであった。そして、また歩き始める。歩けば歩くほど霧は濃くなり身体にかかる負荷は重くなっていった。一体何が原因なのか……。ゼロはそれだけを考えながら歩みを進めていた。しかし、分かるものは1つもなかったのであった。


 更に数時間歩くと目の前に巨大な壁が見えてきていた。そう、これが彼の目指していた王国である。そして、距離も短いので走り出すのであった。後ろに地面の灰や土埃を飛ばしながら。


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壊れる世界と魔法使い              ~Restorer of the world~ 小宮 アオイ @Aoi_Komiya

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