第8話 鶏のから揚げ

 今日は大人から子供まで大人気レシピの、鶏のから揚げを紹介していきたいと思う。衣となる片栗粉のつかけかたにこだわって、どうやって食感を調節するかを含めて紹介していきたい。


「から揚げか、ビールは前回飲んだしなぁ……」

「ハイボールはどうですかねぇ!」

「いいね! 脂っこいから揚げがさっぱり食べられるよっ!」

「いいけど、ウイスキーは『与一』は使うなよ!」

「これは、関連作品の『どうぶつクエスト』も読んでね!って意味ですねぇ!」


 と、いうことで与太話はこれくらいにして、から揚げのつくり方に入っていきたいと思う。まずは材料紹介からしていきたい。


材料

・鶏もも肉 1枚(およそ300g)

・塩糀パウダー 3g(規定量の1/3)

・醤油 大さじ2

・みりん 大さじ1

・酒 大さじ1

・生姜 2片

・にんにく 2片

・片栗粉 適量

・ピーマン 3個

・キャベツ 1/6~1/4程度


「なんで塩糀パウダーの規定量を使わねえんだよ」

「これは、お醤油の味も感じたいレシピだからだね!」

「いずれは醤油麹パウダーも出してほしいですねぇ……」


「とりあえず、鶏もも肉は1口大に切るよっ!」

「切ってあるのを買ってきてますよっ!」

「すでにカットしてある場合は、大きすぎる場合があるから切りそろえて、合わせて不要な脂肪や血管なんかを取り除いてね!」


「そうしたら、鶏もも肉に塩糀パウダーをまぶして、ポリ袋に入れてね!」

「いれたぜ!」

「そういしたら、醤油・みりん・酒と、すりおろした生姜とニンニクの薬味をいれて、軽くもんで馴染ませてね!」

「クロジさん! クマの手なので爪でポリ袋が破けそうです!!」

「はい、クマ用軍手だよっ!」

「そんなの、あるんですねぇ……」


 お約束のボケに対しては、あらかじめ対策を考えておかないといけない。料理も同じで、手順と時間を考えることで、時間を節約することが出来る。


「で、漬け込むんだと思うけど、どのくらいがいいんだ?」

「5分以上、だいたい30分から1時間くらいでいいよ!」

「じゃあ、その間に油や付け合わせの準備をすればいいという事ですねぇ!」

「そう言うことだよっ!」


「この付け合わせなんだが、キャベツはいいとして、ピーマンってどうするんだ?」

「そのまま、生で食べるよっ!」

「苦くないのかよ」

「最近のピーマンはわりと苦みが少ないから、生で食べると意外と美味しいよ!これがまた揚げたてのから揚げに合うんだ!」

 

 これは本当におすすめなので、ピーマンが大嫌いで無ければぜひ試していただきたい付け合わせである。


「じゃあ、キャベツはピーラーで千切りにしましょうねぇ!」

「ピーマンも千切りでいいのか?」

「ダメだよっ!千切りにすると、独特のパリッとした歯ごたえと、そこからにじみ出てくる爽やかな苦みが失われるんだ!」

「じゃあ、どうするんだ?」

「まず、半分に切って種とヘタをくりぬいて、中の種を掃除したらさらに半分に切るよ! 結果的に1個を4等分する形になるね! 種は多少残っていても大丈夫だよ!」


 なんだかんだ喋っているうちに30分が過ぎたので、揚げていくことにする。


「180℃の油で揚げていくよっ!」

「油についての蘊蓄はねえのか?」

「これは語りだすと膨大な話になるんだけど、まず油は『脂肪酸』という物質で、大きく分けると『不飽和脂肪酸』と『飽和脂肪酸』になるんだ。植物油脂が『不飽和脂肪酸』で、動物油脂が『飽和脂肪酸』とざっくり覚えてくれればいいよ!」

「なるほど!」

「で、植物油脂は、主に『オレイン酸』、『リノール酸』、『α-リノレン酸』という三種類の成分で出来ているんだ!」

「どれも、『不飽和脂肪酸』の種類ですからねぇ!」

「それで、『オレイン酸』がメインの油はあっさりした味わいで、特に加熱に強く、酸化されにくいんだ。『リノール酸』は若干酸化されやすいけど、コクがあるというか、油の素材を感じる、主張の強い油だね!」

「なるほどな!」

「で、いわゆる『あっさり油』としてはべに花油、ひまわり油、なたね油なんかがあって、『くせ強油』としては大豆油、綿実油めんじつゆ、米油、コーン油、ごま油なんかがあるね!」

「確かに、コーン油はとうもろこしっぽい風味がしますもんねぇ!」

「ごま油もけっこう自己主張強いぜ!」

「で、好みにもよるんだけど、今回はあっさり、サクサクの衣で行きたいので、なたね油でいいんじゃないかな!」

「キャノーラ油の名前でよく売ってますねぇ!」

「本当に奥が深いので、日清オイリオさんの『植物油のおいしいおはなし』というPDFをダウンロードして読んでねっ!」

「URLは最後に貼りますからねぇ!」

「案件じゃないぜ! てゆうか、むしろ案件くれ! 塩糀パウダーのマルコメさんも案件くれ!」


 脱線しているうちに漬け込み時間が1時間になってしまったが、そろそろ揚げていく。最後に片栗粉の衣をつけるのだが、これがポイントとなる。


「今日は、3種類作って食べ比べてみるよ!」

「片栗粉を変えるんですかねぇ?」

「いや、加水率を変えるんだっ!」

「片栗粉に水を入れるのかよ!」


 今回のやり方は、まずは何も入れない片栗粉、そして少しダマを作った片栗粉、最後に大きなダマを作った片栗粉を入れていくことになる。


「まずは、何も入れない片栗粉だね!」

「これは、単にボウルにいれるか、あるいはポリ袋に入れて振り回すだけでいいぜ!」


「つぎに、ボウルに入れた片栗粉にほんの少し、小さじ半分くらいずつ加水して、少し固まったらレンゲみたいなさじで崩して1~2㎜程度の小さなダマを作るんだ!」

「割と力いりますねぇ!」

「押しつぶしたり、レンゲの角で切ったりを繰り返す感じだな!」


「最後に、もっと加水して、片栗粉の半分くらいが吸水して固くなった状態を崩して、5㎜以下くらいのダマを作ってね!」

「これは更に力がいりますねぇ!」

「ダマが大きすぎると後の食感がヤバいから、大きすぎないようにしておけよ!」


「ダマを作ったものは、さいごに片栗粉を足すと、細かい片栗粉とダマとが両方入っていい感じになるよ!」

粉体ふんたい工学的に言えば、粒度分布りゅうどぶんぷの幅を広くするんですねぇ!」


「じゃあ、これで、三種類の衣をまぶして180℃で揚げていくよ!」


 180℃と言えば『菜箸を水でぬらしてからふき取り、油に入れると全体から細かい泡が噴き出す』くらいの温度だ。自信が無ければ調理用温度計で確認するのがいいだろう。


「順番に揚げていくけど、鶏もも肉はサイズにもよるけど、だいたい4~5分で大丈夫だよ!」

「怖い人は、揚物用グローブをしたら安全ですよ!」

「ステンレス製の油ハネ防止ネットも有効だぜ!」


「手羽元とかの骨付き肉を使う場合は、6~7分揚げた方がいいよっ!」

「火が通りにくいのか?」

「これは、ボクの仮説ですけど、揚物は油に浸っている部分、つまり上面以外のあらゆる方向から熱が入るじゃないですか。だから骨なしの肉だとほぼすべての方向から熱が入るわけですが、骨付き肉は中央に熱伝導率の低い骨が入っているために、実質的に一方からしか熱が入らないと思うんですよねぇ!」

「中央に熱伝導を阻害するものが入ってるってことだねっ!」

「こうやって、女子や文系の読者を置いてきぼりにするんだな……」


 そんな話をしているうちに、から揚げが出来てきた。


「じゃあ、油を切ったらキャベツの千切りと、ピーマンを添えて食べよう!」

「においだけで堪らないです!」

「気を付けて食べないとやけどするぜ!」


 最初の方はまだ暑いので、いちど箸で切って様子を見ながら食べていく。


「まずは、シンプルな片栗粉のから揚げから食べよう!」

「旨い!語彙力がなくなるほど旨い!」

「サクッとした食感で肉汁がジューシーですねぇ……」


「次は、少し加水したものだよ!」

「これは衣の主張が強くなっていいな!」

「『サクッ!』じゃなくて『ザクッ!』としてて、これがまた中のジューシーさを引き立ててます!これは美味しいです!」


「最後は、大きめのダマのものだよ!」

「これは喰いごたえがあるぜっ!」

「バリバリしてますねぇ!ものごい自己主張の衣ですね!」

「ここまで固いと、クマの歯だからいいけど、高齢の方には厳しいかもしれないぜ!」


「こういう風に作り分けると、自分好みの衣が見つけられていいと思うよ!」

「そうですねぇ、なんというか、飽きがこないですし」

「それでもさすがに口の中が油っぽいぞ!」


「そこで、ピーマンを手づかみにしてバリっと食べるんだよっ!」

「おおっ!」

「これは口の中がサッパリとしますねぇ!」

「爽やかな苦みが、たまらなくから揚げと合うな!」


 やはり、から揚げがあると盛り上がってしまい、クマイさんも兄貴も楽しそうにハイボールを傾けている。このあと、変なしゃっくりが出ないかどうか若干不安ではあるが、今回はこのあたりで締めたいと思う。


「今回も大成功だったね!みなさんも、バリエーションのある衣で、ぜひ作ってみてください!」

「すごく、おいしいですよ! ひいふっ!」

「やべえっ!」


【作り方のまとめ】


材料

・鶏もも肉 1枚(およそ300g)

・塩糀パウダー 3g(規定量の1/3)

・醤油 大さじ2

・みりん 大さじ1

・酒 大さじ1

・生姜 2片

・にんにく 2片

・片栗粉 適量

・ピーマン 3個

・キャベツ 1/6~1/4程度


 鶏もも肉は1口大に切る。


 鶏もも肉に塩糀パウダーを規定量の1/3まぶす。


 鶏もも肉をポリ袋に入れ、醤油、みりん、酒と、すりおろした生姜、にんにくをいれて良くもみ、袋を縛って30分から1時間程度つけこむ。


 キャベツは千切りにし、ピーマンは種とわたをとって1/4に縦切りにする。


 片栗粉をボウルに出し、水分を少しずつ加え、匙で押しつぶしたり切ったりし、攪拌かくはんしてダマを作る。最後に片栗粉を少し加えて粒度に幅を持たせる。


 漬け込んだ鶏もも肉に片栗粉をつけ、180℃の油で4~5分揚げる。


 できた唐揚げの油を切り、キャベツとピーマンを添えて皿に盛り付ける。


【参考】


どうぶつクエスト 第77話「与一」

https://kakuyomu.jp/works/16817330660657311412/episodes/16817330668206100214


どうぶつクエスト 第90話「朱异しゅうい

https://kakuyomu.jp/works/16817330660657311412/episodes/16818093090752285624


日清オイリオ 「植物油のおいしいはなし」

https://www.nisshin-oillio.com/story/

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クロジのレシピ帖 クマイ一郎 @kumai_kuroi

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