第62話

リビングのドアを開けると、ふわっと暖かい空気を感じて、叶和の顔を見た。



「一度家に帰ってたの?」


「メッセージ送ったら、『電車の中』って返事が返ってきたからそれに合わせて駅に行った。だからずっとあそこに立ってたわけじゃない。がっかりした?」


「そんなわけないでしょ! ほっとしてる。あんな寒いところにずっといたって言われた方が心配になる」



コートを置きに行って、着替えて戻って来ると、テーブルの上に、コンビニのサンドイッチと焼きプリンの他に、ホールケーキが置かれていた。


ケーキにはチョコのプレートが飾ってあって、そこにはホワイトチョコで文字が書かれている。


言葉より先に涙が出たわたしに、叶和がカクテルを渡してくれた。


わたしが着替えている間に作ったらしい。



「どうぞ」


「ありがとう」



カクテルはライムの風味はするものの、かなりウォッカが強い。



「これ、アルコール強くない?」


「30度以上はあるかな。ライラって言うんだ。あとで意味を調べて」



叶和はケーキを見ながらにこやかに言った。



「ろうそく要らないよね? ケーキがろうそくでいっぱいになっちゃうから」


「いらない。ねぇ、どうしてそんなに意地悪なの?」



ケーキの上のチョコのプレートに書かれた文字は――


Happy Birthday SAYAKA



「誕生日おめでとう。去年の今日、沙也加に会えて良かった」


「わたしも。叶和に会えて良かった」





去年の誕生日、わたしが拾った男の子は、いつの間にか、わたしの一番大切な人になっていて



出会って一年目の今は、お互いが、かけがえのない存在になった



そしてそれは、来年も、再来年も、ずっと変わらないと信じている






END

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Laila 野宮麻永 @ruchicape

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