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 その頃、佐々木家でもそのサイトの事が話題になっていた。それほど、この連続行方不明事件は話題になっている。だが、なかなか手掛かりがつかめない。どこに手掛かりがあるんだろう。誰もが焦っていた。


 拓朗の同級生の怜太も悩んでいた。その先が全くわからない。


「どうだった?」

「拓朗くんに聞いたの。駆け込み寺ならぬ駆け込みサイトってのがあって、学校の悩みを聞いてくれる掲示板が怪しいらしい」


 同級生の吉井も怪しいと思っていた。このサイトが怪しい。それは誰でもわかっている事だ。だが、それが何の関係があるのかはわからない。


「そうなんだ」

「あのサイトの怪しい所はね、いじめの悩みがあると、コメントが止まるって事」

「えっ!? どうして?」


 吉井は驚いた。どうしてそれを言うと止まるんだろう。その先の会話に何かあるんだろうか? 密かに何かをやり取りしているのは確かだ。ここに何か手掛かりがあるんじゃないかな?


「わからない」

「うーん・・・」


 怜太は考え込んでしまった。それ以上は全くわからない。そこに手掛かりがあるのに。その先が全くつかめない。それをつかむ手段はあるんだろうか?


「どうしたの?」

「陰で何かを言っているかもしれない」

「きっとそうよ。絶対にここがおかしいわ」


 吉井も考え込んだ。怜太の言っている通りだ。確かにここが怪しい。ここさえわかれば、話が進むのに。


「僕もそう思ってるよ。そこについては俺も知らないな」

「そうなんだ」


 吉井は下を向いた。その先を知るすべはないんだろうか?


「何か手掛かりになるかもしれない」

「そうかもしれないね。また調べてみましょ」


 吉井も調べる事にした。たくさんの人で調べれば、なんとかなるかもしれない。みんなを守るために頑張らなければ。


「うん。私も協力するから」

「ありがとう」


 怜太と吉井は別れた。それぞれの家に帰るようだ。怜太は左に曲がり、自宅に入った。自宅は明かりがついている。すでに両親は帰っているようだ。怜太は悩んでいた。何にも進展がなかったと言ったら、両親はどんな反応をするんだろう。


「はぁ・・・」


 怜太は自転車を車庫に停めた。そこで、怜太は考えた。いったい、あのサイトは何だろう。どうしていじめに関する事を書いたら黙るんだろう。その先がわかれば、原因がわかるかもしれないのに。


「あのサイトか・・・」


 怜太は自宅の玄関に向かった。また両親にあの事を聞こう。ひょっとしたら、両親がそれにまつわる手掛かりを調べているかもしれない。そして、事件の解決につながるかもしれない。




「ただいまー」


 留子の夫、早川猛(はやかわたける)はいつものように帰ってきた。猛は黒いコートを着ている。今週で最低気温も最高気温もぐっと下がり街では多くの人がコートを着て歩くようになった。一気に冬らしくなった感がある。


「おかえりー」


 そこに、留子がやって来た。留子は心配していた。何か手掛かりは見つかったんだろうか?


「留子、最近、気になるサイト、なかった?」

「うーん・・・」


 留子は何かを考えている。怪しいのを見つけたんだろうか?


「何でもいいの」

「YouTubeぐらいかな?」


 YouTubeは動画配信サイトで、無料でいろんなものが見る事ができるそうだ。何も手掛かりがないように見える。この事件はなかなか手掛かりがつかめなくて、難しいな。本当に大丈夫だろうか?


「そっか・・・」


 と、猛は考え事をしていた。何かを知っているのでは? 留子は忠治に聞こうと思った。


「どうしたの?」

「職場仲間から聞いたんだけど、駆け込み寺ならぬ駆け込みサイトってあるの、知ってる?」


 やはり駆け込みサイトの事だ。会社でも話題になっているとは。きっと、小中学生の子供を持つ家庭だろう。被害者が小中学生なので、彼らがいる家族はとても気にしているんだろう。


「駆け込みサイト? うーん、聞かないなー」


 留子は全く知らないようだ。だが、駆け込み寺は聞いた事がある。それのインターネット版だろう。それがどうかしたんだろうか?


「そっか・・・」


 猛は首をかしげた。そこに手掛かりがあるように見えるんだが、まるで手掛かりがないように見える。


「どうしたの?」

「いや、手掛かりはないんだけど、行方不明事件に関連があるんじゃないかって」


 猛は思っていた。そのサイトが小中学生の連続行方不明事件にかかわっているのでは? そこさえわかれば、進むのに。


「そう、か・・・」


 と、そこに留子の娘、芳江(よしえ)がやって来た。芳江は中学生で、生徒会長をやっている。


「どうしたの?」

「母さん、私も調べてみるよ」


 芳江に言われて、留子は元気が出た。留子があんなに頑張っているんだから、自分も頑張らないと。


「ありがとう」

「お母さんも、頑張って」


 留子は芳江の肩を叩いた。私にも期待しているようだ。留子の期待にこたえなければ。


「うん! お父さんも頑張ってるらしいよ」

「本当? お父さんに負けないように、頑張らないと」


 これは家族で解決する問題だ。なんとしても解決しないと。だけど、その手掛かりはどこにあるんだろう。


「期待してるわよ、芳江」

「ありがとう」


 猛は2階に向かい、部屋に入った。猛は黒いコートをハンガーにかけ、少しゆっくりとしていた。晩ごはんができるまでここで一服だ。

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2025年1月8日 20:00
2025年1月15日 20:00
2025年1月22日 20:00

駆け込みサイト 口羽龍 @ryo_kuchiba

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