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その噂は、学区中、というより全国に広まっていた。阿部恵子(あべけいこ)も気にしていた。恵子の娘、七海(ななみ)が通っている市立中学校でも同様の行方不明事件が起こった。中学校は原因を調べているが、全く手掛かりがつかめないという。中学校の関係者は焦っていた。なかなか手掛かりがつかめず、恵子も焦っていた。
「ねぇ恵子さん」
恵子は顔を上げた。そこには里子がいる。
「どうしたの?」
「変な事、なかった?」
その声にけいこは反応した。ひょっとして、行方不明事件の事だろうか? かなり話題になっているし、同じ中学生の息子を持つ親の間では知らない人はいない。
「急に何?」
「いや、最近起こっている行方不明事件の何かにつながらないかなと思って」
それを聞いて、恵子は何かを思い出した。それは、七海がインターネットで見つけたあるサイトの事だ。ちらっと見ただけで、あまり覚えていないが、どこか不気味だったという。
「そっか。私の娘ったら、変なサイトを見つけたのよね」
「どんなサイト?」
里子は反応した。ひょっとして、何かの手掛かりではないか? これでその原因がわかるかもしれない。里子は少しの期待を持っていた。
「それについては言わなかったわ」
結局、そのサイトについては全くわからなかったようだ。だが、これは抑えておきたいな。ひょっとしたら、これが手掛かりになるかもしれない。
「変なサイト、か・・・」
それに里子は反応した。インターネットの中に変なサイトがある。インターネットを調べてみると、あるかもしれない。帰ったら調べてみよう。セキュリティは万全だ。
「どうしたの?」
恵子は首をかしげた。本当に関係があるんだろうか?
「関連があるかなと思って」
「うーん、どうだろう」
そう言われて、恵子も気になった。そのサイトで何らかのやり取りをした人が、行方不明になっていると推測した。それが確かなら、そのサイトが原因に違いない。
「私も調べてみるわね」
「ありがとう!」
2人はそのサイトを調べようと決意した。きっとそれが、行方不明事件の解明につながると信じて。
その夜の鈴木家の食卓。今日も家族全員、3人が集まっている。怜太は楽しそうだ。だが、2人は浮かれない表情だ。行方不明事件の事で頭がいっぱいだ。
「ねえ、怜太」
「どうしたの?」
晩ごはんを食べていた怜太は顔を上げた。話しかけたのは里子だ。
「変なサイトについて、知ってる?」
「うーん・・・、あれ?」
それを聞いて、怜太は反応した。何か、変なサイトを知っているんだろうか?
「どんなの?」
里子は思った。この子は何かを知っている? ひょっとして、そのサイトを見た事がある?
「どうしてそんなに知りたいの?」
怜太は思った。どうしてそんなにサイトの事を知りたいんだろうか?
「ここ最近、子供たちが立て続けにいなくなってるの、知ってる?」
「ああ、あれね」
怜太もその事は知っている。まだ行方不明は起きていないものの、中学校でかなり話題になっている。というより、関係者で知らない人はいないぐらいだ。
「教えて!」
「ああ。駆け込み寺ならぬ駆け込みサイトってやつなんだけど、学校での悩みを聞いてくれる掲示板があるらしいよ」
駆け込み寺ならぬ駆け込みサイト。駆け込み寺は聞いた事があるが、駆け込みサイトがあるとは。おそらく、駆け込み寺のインターネット版だろう。日頃の悩みを聞いてくれる掲示板があるというのはいい事だが、それがどうして怪しいんだろうか?
「そうなんだ」
「その掲示板に書き込めば、何でも解決してくれるらしいよ」
怜太は素直に話している。何の問題がないように見える。だが、怜太はだんだん表情が暗くなっていく。その掲示板に何かあるんだろうか?
「ふーん・・・」
「なかなかいいように思えるんだけど、時々、いじめの悩みがあると、コメントが止まるんだ」
いじめの悩み・・・、それに何かがあるんだろうか? それを調べたら、解決すると思うんだが、手掛かりがつかめないようだ。明らかに怪しい。関連がなくても、突き止めないと。
「えっ!?」
「それからどうなったのかは、わからないんだけど」
ただ、怜太は疑問に思っている。あれで書き込まれたいじめっ子が行方不明になったのでは? 怜太はそのサイトについてもっと調べたいと思った。
「うーん・・・」
「どうしたの?」
武は怜太の表情が気になった。怜太も調べたいんだろうか? ならば賛成だ。多くの人が調べれば、きっと手掛かりがつかめるかもしれないぞ。
「ちょっと俺も調べさせて」
「わかった」
怜太は再び晩ごはんを食べ始めた。だが、怜太の表情は浮かれない。あのサイトが気になってしょうがないようだ。またのぞいてみて、真相を突き止めてやる!
「うーん、これが神隠しと関連があるのかな?」
「わからないけど、関連があるかもね」
里子は思った。やっぱり関連があるかもしれない。絶対に調べないと。
「もっと周りの人からも調べてみる」
「ありがとう」
怜太は顔を上げた。みんな悩んでいるんだな。これはみんなで解決しなければならない、大きな事件だ。
「大変な事になったね」
「そうだね」
武と里子は不安になった。早く解決しないと。これ以上被害者を出したくない。
「ごちそうさま」
怜太は2階に向かった。これからサイトを調べるんだろうか? 2人は怜太の後ろ姿を見て、期待していた。
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