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 翌日の夕方、武の隣に住んでいる早川留子(はやかわとめこ)は悩んでいた。子供たちの行方不明事件だ。自分も子供がいるから、とても気になる。うちの子供に何かあったらどうしよう。そのせいで、昨夜は全く眠れなかった。何か手掛かりになるものを探しているが、なかなか見つからない。


「どうしたの?」


 留子は横を向いた。そこには佐々木香苗(ささきかなえ)がいる。香苗には中学生の子供、拓朗(たくろう)がいる。香苗は行方不明事件の事を知っているんだろうか?


「最近、子供たちが消えるって話、知ってる?」

「ううん。わからないわ」


 だが、香苗は全く知らない。子供はもう大人だから、全く関係ないと思い、興味がないのだろう。


「そうなんだ・・・」

「どうしたの?」


 香苗は気になった。留子はどうして悩んでいるんだろう。悩んでいるのなら、話を聞いてやろうじゃないか。


「主人が気にしていて・・・」


 と、佐々木は何かを思い出した。ここ最近、ワイドショーなどでやっているあの行方不明事件の事かな?


「子供が消えるって、気になるよね」

「うん」


 それを聞いて、香苗も不安になった。留子にも中学生の子供がいる。ひょっとしたら、留子の子供もその被害に遭うんじゃないかと不安になってくる。


 ふと、留子は何かを思いついたような表情になった。


「その子たちの共通点って、何だろう」

「共通点?」


 留子は思った。ひょっとして、いなくなった子供達には共通点があるのでは? こんなに連続していなくなるのなら、何かの手掛かりがあるのでは。


「子供たちが立て続けにいなくなるって、何か共通点があるんじゃないかな?」

「そうかな?」


 言われてみればそうだ。何らかの共通点があって、狙われるんじゃないかと。それによって、原因が何なのかわかってくるだろう。


「きっとあるはずよ!聞いてみて!」

「わかった。父さんにも言ってみるね。私も調べてみるから」


 香苗も夫の忠治(ちゅうじ)に調べてもらう事にした。これは留子だけの問題だけじゃない。日本中の問題だ。早く何とかしないと、これ以上被害を出してはならないから。


「ありがとう」


 香苗は家に帰っていった。留子は後姿を見ている。何とかしてくれるんだろうか?


 家に帰ってきた佐々木は考えていた。行方不明事件の共通点はどこにあるんだろう。それを探れば、原因がわかるかもしれない。そして、犯人がわかるかもしれない。


「うーん・・・。共通点か・・・」


 香苗はテレビをつけた。テレビでは、行方不明事件の事がやっていた。いまだに犯人がわからないとアナウンサーが話している。コメンテーターも頭を抱えている。どうしてこんな事が連続して起こるんだろう。原因はどこにあるんだろう。




 夜になって、忠治が帰宅した。忠治はサラリーマンで、マイカーで通勤している。今日も残業してきた。大変だけど、家計を支えるためだ。頑張らないと。


「ただいまー」

「おかえりー」


 忠治は帰宅すると、すぐに2階に上がろうとした。荷物を置いてくるようだ。


「ねぇ父さん?」


 忠治は横を向いた。妻は不安そうな表情をしている。何か気になっている事があるんだろうか?


「どうした?」

「行方不明事件の事なんだけど」


 行方不明事件の事と聞いて、忠治はあの事かと思った。行方不明事件は職場でもかなり話題になっている。特に、小中学生の子供を持つ同僚の間では、知らない人はいないほどだ。まさか香苗がそれを話してくるとは。近所でもこんなに話題なんだな。


「どうした?」

「何か、共通点があるんじゃないかな?」


 それを聞いて、忠治は思った。確かに共通点があるはずだ。その共通点を探れば、何かがわかるんじゃないかな?


「そうか。共通点か・・・。あるかもしれないな」

「近所の主婦に言われたの」


 香苗は留子を気にしていた。留子がこんなに悩んでいるのなら、自分も何とかしないと。これは留子だけの問題じゃない。


「よし、明日にも聞いてみるよ、行方不明事件でいなくなった子供の知り合いにね」


 忠治は決意した。香苗のためにも、留子のためにも何とかしないと。


「わかった。私も何とかするね」

「ありがとう」


 明日から、神隠し事件の事について調べてみよう。何らかの手掛かりがあるかもしれない。


「お父さん、何かあったの?」


 そこに、拓朗がやって来た。拓朗は晩ごはんを食べるために、部屋のある2階から1階に下りてきた。


「何でもないよ」

「話してよ!」


 だが、拓朗は真剣な表情だ。まるで、何で悩んでいるのかを知っているようだ。香苗は拓朗の真剣な表情を見て、この子も頑張りたいんだなと思った。


「・・・、わかった。子供たちがいなくなるって、知ってるか?」

「えっ!?」


 それを聞いて、拓朗はお思った。あの子供たちがいなくなるという噂の話か。拓朗のクラスでは被害は出ていないけれど、中学校でもかなり話題になっている。


「その理由が、全くわからないんだよ」

「そうなんだ。僕にも調べさせて!」


 拓朗は思った。みんなでその原因を調べよう。必ず手掛かりがつかめるかもしれない。いろんな方面からその原因を探れば、なんとかなるだろう。


「いいよ。頑張ってね!」

「うん」


 拓朗はダイニングに向かった。その様子を見て、忠治はため息をついた。とんでもない事になったな。なんとしても、早くその原因を突き止めないと。


「大変な事になったな」

「ああ」


 早く原因を突き止めなければ、もっと被害が出てしまう。とはいえ、本当に手掛かりが見つかるんだろうか? とても不安だ。

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