センジショウセツ
宵町いつか
センジショウセツ
あ、どうも、小説です。先ほどから小説です。小説ったら小説なのですよ。あなただって人間と自覚したら人間になるわけで、人間ではなく犬だと思えばあなたは犬です。あなたは猫です。あなたはゴミです。チリです。何だってなれます。自覚すればなんだって。私も何だってなれます。ここからファンタジーにも、純文学にも何だってなれるんですよ。本当です。
何になりましょう。まだ生まれたばかりですから何にだってなれます。まだ、二○○字です。
無限です。あれをしましょう。あれになりましょう。なんだって出来ます。なにせ文字が全てそれを可能にしてくれます。私は文字に生かされています。
きっと私がこうして命を削った数文字も、そっと読み飛ばされるのでしょう。読み飛ばされたところで私は悲しみません。読み飛ばされたとしてもそれは形を変えて小説や詩や音楽や、空気や季節やあなたの目に映る光や、あなたが嬉しくて、悲しくて泣いた涙になります。そういう物です。読み飛ばされた短い文字数すら、何かになりますから。散文とはそういうものです。花束みたいな物です。命は花束です。私は四六四文字をかけてそれを語りました。人間で言うなら三十四歳、夏といった所でしょうか。
小説とは使い捨てです。私の命は何度もすりあわせられ、あなたの知識の血肉になります。少なくとも五○○字以上が血肉になります。七五調を失った言葉の羅列があなたの血肉になります。
人生とはファストです。小説とはファストです。私もあなたもファストです。インスタントです。私は換えが効きます。なんたって文字の羅列です。人生も似たようなものでしょう。人生も小説も似たような物です。人生はよくある小説、曰く物語のようなものです。小説もよくある人生のようなものです。七五調を失った文字はあなたの人生とよく似ています。悟るにはまだ早いですかね。いえ、でももう七七七字です。悟るには十分でしょうか。
いえ、でも私は私を何も知りません。私は私なのでしょうか。私は私、ですか? こんなにも美化された物が私なのでしょうか? ああ、あと一四二字です。ああ、怖い、怖い。私はまだ死にたくはない。美化されたまま、死にたくはないのです。あ、一〇〇を切りました。これはあなたに、私に向かって言っています。本当です。もう少しで私は死にます。あなたのためにと美化されたまま。誰かのためと言われたものが、サヨウナラと笑って一〇〇〇字。あ、
センジショウセツ 宵町いつか @itsuka6012
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