第3話 疾走する哀楽

 モモがニーケに引きずられ、たどり着いたのはボロボロの古城であった。

 重く錆び付いた扉を開け、中に入ったモモとニーケ。


 石床に雑に投げ捨てられたモモ

 ニーケの異常に早い足に酔い、プラスして鞭のように連れてこられたモモ

 追加で食らった、雑に投げ捨てられ食らった石床の痛み。

 それら含めた、酔いと激痛にモモは石床に悶え転がった。


「おい、モモ聞け。ここから動いたらぶっ殺す。ぶっ殺す·····」

「ッア!·····!」


 ニーケは、冷めた目で悶え転がるモモを睨み影の奥に姿を消した。


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「鬼だ。鬼すぎる。冷徹の鬼だ。あれはきっと地獄からの使者だ。獄卒が俺を迎えに来たんだ」


 だいぶ痛みと酔いが治まったモモは、石床に寝そべり天井を見ていた。

 モモが、動けば殺される恐怖で震えて待っていると影の奥から足音が。


 暗闇から現れたニーケの手には何故かパンを持っていた。

 ニーケは手に持っていたパンをモモの傍の石床にボンッと落とした。


「え」

モモ食え。腹が減ればモモは死ぬ。死ぬ前に食え。食わねばぶっ殺す」

「せめて石床以外で食べたいのだが」

「·····」

「いただきます·····」


 モモは、またニーケの圧に屈した。

 パンからは、ガリッ、とパンからしてはいけない音が齧る度に響いた。


「·····ニーケさんは食わないのか·····」

「自分はいい、獣の干し肉がある」


 ニーケは小袋から獣の干し肉を取り出してモモに見せた。

 モモは黙って、ガリッとパンを齧った。

 ニーケはブチブチッと獣の干し肉を食いちぎった。


 硬くパサパサで味のないパンを食べるモモ

 モモの目はとうに死んでいて、顎は痛く口の中の水分もなくモモはとうに虚無に陥っていた。

 モモの限界は過ぎていた。


 モモは立ち上がった。


「どうした百」

「ここに台所はあるか?」

「ダイドコロ·····なんだそれは」

「火をおこしたり水を汲んだり飲むところだ」


 ニーケは首を傾げたが、思い当たる場所を指さした。

 モモは、ニーケが指を指した方に向かった。


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 ニーケが指さした方に向かうと、モモが目にしたのはホコリと蜘蛛の巣にまみれた台所であった。


「これは酷い·····」


 モモはそんな台所を見て絶句した。

 モモが台所を散策していると、台所の石床に乱雑に置かれた野菜と牛乳があった。

 モモはその野菜を手に取り傷んでないか確認した。


「ニンジン?ジャガイモ?」

「おい、動くな百。死にたいのか!」


 モモの後を慌てておってきたニーケ。

 そんなニーケの方をモモは向く。


「ニーケさん、この野菜と牛乳は?」

「昨日助けた人から貰った」


 モモは野菜と牛乳を手にし、石窯が壊れてないか確認する。

 隅々まで確認し、使えることを確認したモモ


「ニーケさん、皿と鍋はあるかな?」

「·····さら·····なべ·····」


 ニーケは皿と鍋と聞き、ニーケの足元に転がっていた木のボールと鉄鍋を手にし、モモに見せた。


「それだったんだね·····」

「これがどうした百」

「ニーケさん、それを綺麗な水で綺麗に洗ってきてください」


 ニーケが『なぜ』とモモに聞こうとモモの方を向くと、モモは必死に石窯に火をおこそうと奮闘していた。

 ニーケは、そんなモモを見て、黙って木のボールと鉄鍋を外の井戸に洗いに行った。


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 鉄鍋と木のボールを洗い終わったニーケ。

 ニーケが台所に戻ると日をおこし終えて、ニーケを待つモモがいた。

 ニーケは洗い終わった鉄鍋と木のボールを手渡した。


「うん、綺麗だ!。ありがとうニーケさん」

「·····」


 モモは鉄鍋に牛乳を入れた。

 その次にモモは懐にしまってあった小刀を取りだし、慣れた手つきで野菜を切って煮立った牛乳に野菜を入れた。

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 床に寝そべって待っていたニーケに暖かいシチューの入った木のボールをモモ手渡した。

 モモも、ニーケの傍に座りシチューを食べ始めた。


「まあ、いい出来なんじゃないか?」


 モモが食べる姿を見てニーケもシチューを一口食べた。


「不味くないか?」

「暖かい·····」

「味の感想を求めたいんだがな·····。ああ、さっきの石のような硬いパンを浸して食ってもいいだろうな」


 モモは、先程のパンを小刀で切ってパンを浸し食べた。

 その様子をニーケはジーッと見つめた。

 モモはその様子を見て、パンを小刀で切ってニーケに手渡す。


「ダメだ、そのパンは百のだ」

「元々はニーケさんのだろ?。それにこのパンを俺が食わねば絶対に死ぬということもない」

「·····」


 モモから手渡されたパンをニーケは渋々と受けとった。

 ニーケもパンをシチューに浸し食べた。


「百は料理が出来るんだな」

「味は保証しないけどね」


 ニーケは小袋から獣の干し肉を取りだし、モモに手渡す。


「自分は百のパンを貰った。だから私の獣の干し肉をあげる」

「!·····ありがと」


 モモはニーケから獣の干し肉を受け取った。

 その獣の干し肉は先程のパンより固く、凄くしょっぱくモモは涙を流した。

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祓い屋と勇者 凛々 @kakuyom_333

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