物語がいつどこでどのように生まれたのか。
きっと厳しい自然の中で生きる人々には、飲食と同じくらい、物語が必要だったに違いない。
そんな原始的な感性を刺激される、神話や民話に類するお話です。
寒さの厳しい土地に暮らす少年が、土地の動物の命をもらって、吹雪の精霊に見守られて、自然の命の循環の中に生きる物語。
長い時間の流れが、生活感や人の息遣いを感じさせる文章で、穏やかに綴られています。
恵みをもたらすこともあれば、全てを奪うこともある自然に、現代よりずっと近しい場所で生きていた人々は、どんな感情を抱いていたのでしょう。
きっと温かくも厳しい絶対的な存在として、時に感謝を捧げ、時に畏れ敬って、より良い関係を人間と築いてくれるよう、祈り続けていたのではないでしょうか。
そうした素朴な人の営みを説話に仕立てた、良作だと感じました。