結城 優希@毎日投稿

無題

無題

「あぁどうして……どうして……僕の前からいなくなる……。─────も!じいちゃんも!僕にとって大切な人にかぎつて……どうして……。」


 僕は─────。三ヶ月前に祖父を亡くした。そして立て続けに僕にとって何より大切だった─────との連絡も途絶えた。今どこで何をしているのか、生きているのかもわからない。どうしてだよ神様……。僕が何をしたって言うんだよ。なぁ神様。いるんだろ?なぁ……どうしてこんな僕を追い詰めるんだ?ねぇ、頼むよ!もうやめてくれよ……。僕はもう耐えられない。限界なんだよ!

 

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 人に対して壁を作って本当の自分と切り離して、心の弱さを隠して取り繕うのにはもう慣れた。そうしないとやってられなかったから。人は裏切る。子供は無邪気で……残酷で……。期待しなければ裏切られることもない。心を閉ざせば傷付けられることもない。だから僕はこれまでもこれからもそうやって生きていくんだと思っていた。昔みたいに人に期待をして、心を開いて人付き合いをすることなんてもう二度とないと思っていた。


 でも、─────には心を開いた。そして唯一心を開けた─────に依存した。失った今となってはそれが良かったのか悪かったのか……。僕には判断出来ない。ただ一つ確かなのは、その瞬間は幸せだった。生きる意味も死ぬ理由もなくてただ消極的に生きていた僕が初めて生きたいと思えた。


 僕の手が届かないところに行ってしまってから早三ヶ月。楽しかった日々を思い出さない日はなかった。辛すぎる世界の最後の砦である自室。それも今となっては辛い場所に変わった。人との繋がりが途絶える自室。昔はそれが心地よかった。でも今は─────にはもう手の届かないことを僕に強制的に思い出させる場所だ。


 いつしか僕の心の中心にいた─────。それがなくなった今、僕の心は決壊寸前だった。何度死のうと考えただろう。考えはしても僕に死ぬ勇気なんてない。もしかしたら─────と僕の人生が交わる瞬間があるかもしれない。そんなもっともらしい理由を並べて、結論を先延ばしにするだけ。ただ小心者なだけだっていうのに。


 死ねないのなら生きるしかない。例えそれがなんの意味もない空虚なものだったとしても。毎晩あの日を思い出して一人泣くことになろうとも。きっと僕はこの先を出会いと別れを繰り返す中で心が壊れていくんだろう。それでも今はまだ進むしかない。


 死ねないという消極的な理由とはいえ生きることにしたのだから……。


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