東京駅、桜の季節。別れの瞬間を切り取った珠玉の一編

「これで、お別れなんだ」
——東京駅のホームで、新幹線に乗らない「私」が、遠ざかる電車を見送る。
互いを想いながらも、選んだ道が違う二人。「いつか」を約束できないまま、いつもと同じふりをして過ごした最後の日々。ムーンストーンの指輪、白詰草の指輪、そして親友の優しさ。
散文詩のように紡がれる言葉が、別れの痛みと美しさを胸に沁み込ませる。ラジオから流れる『なごり雪』、春に舞う桜の花びら——
それは「私」にとっての「なごり雪」。
静かに、でも確かに心を揺さぶる。大人の恋愛の終わりを描いた、切なくも美しい物語です。

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