第5話 お伽噺の終わり 

 目を開くと、地面に広がる雪はふかふかとした布生地に変わっていた。

それより、目を開けられる事に驚いていた。


見れば、茶色のソファにはーちゃんが座り周囲を見渡している。

ここは誰かの家の中か。

近くにはストーブが赤く点っていた。


「書いたよ、二人のお話」


私の横に、レイラちゃんが正座して座っている。


そうか。

作者の大元はいれど、私達は数多の物語が描かれた。

これは、レイラちゃんの書いた話?


「でも子供が作った空想でしょう?レイラ、飽きたら私とアリスはまた戻るのよ。それじゃあこれは束の間の休息でしかないじゃない!」


はーちゃんは、もう一度現実に行くのが本当に嫌なのだろう。


「飽きたりしないよ」


レイラちゃんは首を振る。


「だってレイラは多分、もうあの世界にはいないから。だから、大丈夫だよ。ずっとここにいるよ」


やっぱり、私達は死んでしまったんだ。

でも、これはその先の新しい世界。


それを聞いた時のはーちゃんの顔は、しがらみから解き放たれたかのような笑顔だった。


「へえ、じゃああなたも物語の一員よ。だから、私の二人目の友達になって」


「うん」


と少女は力強く頷く。


「アリス、友達って簡単に作れるのね」


物語が終わり、新たな話が始まった今、彼女はもう女王様でも何でも無い。


「解釈違いだとしても、悪くないでしょ?」


だって私達が友達なのは変わらないんだから。




外には色とりどりの電飾が木々に絡んでいる。

それはあの街で見たようなクリスマス。

見れば兎や猫が街々に飾り付けをしていた。


「新しい話ね・・・」


「レイラちゃん、どんな続きを書いたの?」


そう言うと、彼女は満面の笑みで、

「内緒!」

と言った。


「行ってみよ」


と彼女は走っていく。


玄関らしき扉が叩かれて、レイラを呼ぶ女性の声が聞こえる。

私とはーちゃんは、顔を見合わせて少し笑った。


近くにあった木造の小さな机に、レイラちゃんの持っていた本が開かれている。

見れば、最後のページにピンクのクレヨンで、

みんなはずっと、幸せに暮らしました

と拙い字で書かれていた。


こんな世界でも、誰かが続きを空想する限り物語は再生する。私達は、生き続けられる。

その終わり方は、良い結末だった。

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アリスの居場所 伊咲  @Jun1150

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