第6話 学校の冬兄 に!!
「違うわアホっ!!」
……最近コラボしてた歌い手さんの関西弁がうつったのか、何故かエセ関西弁のような口調で珍しく大声をあげ、そしてやってしまったとでもいうように固まった氷室。
六月ごろにやっと、マフラーからチェンジした黒マスクで顔はわからないが、その口元はおそらく、見たこともないほど苦々しく歪んでいる事だろう。
とりあえず、そうなった元凶として……珍しいものを見たと目をキラキラさせる女子達から遠ざけてやろうという思いやりと、それを遥かに上回る好奇心から、氷室の腕を引っ張って教室から出した。
◇
「ちょっ、私は関係ねぇだろうがっ!! テメェの個人的な用事に巻き込むな!!」
「まぁまぁ」
途中で見かけた、購買帰りの
奈留は花のJKだが、性格がどっかの青春バトルストーリーに出てくる女ヤンキーかと思うくらいにさっぱりしてるし、氷室を見ても目がハートにならない珍しいタイプだから……誘っても氷室は怒らないだろうと考えた末の
まぁ、奈留の様子を見るに、後でスタバかなんか
氷室が俺に対してだけは少し態度が柔らかいから、よく一緒にいる事もあって最近は
こう見えても、俺あまりに成績悪過ぎて、私立であっても留年がないはずの中学校で留年してるからな? ……氷室くんよりも一つ年上な分、ちょっとは考えるんだよ。
俺は彼女が欲しいからな!!
氷室と恋人疑惑なんて立てられてたまるかっ!!
「で? 彼女じゃないならどこのどいつなんだ? お前はいつもお昼ご飯をカロリーメイトで済ます不健康くんだし、俺は今持ってるメロンパンが今日の昼飯だからここで済ませられる。さぁ……洗いざらい吐いてもらおうじゃねぇか?」
だが、彼女持ちだった場合の慈悲はない。
非リアのお兄さんは、今必死でリア充爆散の呪いを唱えるのを我慢してますっ!!
「いや、こんな
「そうだよな〜。私も、ここまでの経緯すらもわかってない事もあるし、心底さっさと済ませて教室に戻りたいんだが」
「はぁ!? 良くないに決まってるだろっ!? あのなぁ、モテ度に差があるにしても、氷室は俺と同じで彼女がいないの!! そう思ってたのに彼女がいてみろ!! 俺は泣くぞ!?」
二人の絶対零度以下の目線にだって、構うもんかっ!!
こっちには、譲れないもんがあんだよ?(圧)
「彼女じゃなくて、小学三年生の近所の男の子だよ。普段はしっかりしてるのに、時々ぼうっとして転ぶんだ」
そう話す氷室の顔は、マスク越しでもわかるくらいに緩んでいて……。
「……そいつ、可愛いんか?」
あまりに優しい表情をしているから、そろぉっと聞いてみると初めて見るような……というか確実に初めて見る満面の笑みで、「夏くんっていう子で、すごくかわいい」と
『氷の帝王』と呼ばれる、氷室の笑み。
写真を撮って売れば、絶対に恋する乙女に高値で売れるだろう……。
俺ですら、その余りの破壊力に少しくらっときてしまった。
これ……もしかして、夏くんって子にはいつもそんな感じで接してるんか?
もしそうなら……氷室って、なんて罪作りなのだろうと思う。
「へぇ……氷室にそう言わせるなんて、夏くんって随分なイケメンなんだなぁ? 私、ちょっと気になるかも〜」
「いくら未空でも、夏くんはあげられない。ちゃんと夏くんを見守って、幸せにしてあげられる人じゃないとね」
「……ふぅ〜ん?」
ほんの少しニヤッとして、焼きそばパン片手に宣った奈留に向かって即答した氷室の様子を見て、『これ、見守るべき尊いやつだ!!』と、腐ってない俺と奈留も思わずアイコンタクトをして、確認してしまった。
まずい。
ニヤける。
これは、もしかしなくても大変面白いネタを掴んでしまったかもしれない!!
「もう帰っても良い?」と目を細める氷室を引き留め、奈留と俺はニヤケ顔で一つの要求をした。
冬兄と夏ショタ 風宮 翠霞 @7320
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