第25話 魔物の話

__冒険に神父エイダンも加わることになった。しかし代理の到着まで1日ほどかかると言われ、エアスト村で最後の休息をとることに__



「おーい、ご飯の時間だぞー」

下の階、恐らく食堂の方からバロンの声がした。

「ご飯だって!私エル呼んでから行くからみんなは先行ってて!!」

ライリーがそう言って部屋から飛び出して行った。

「バロン結局戻ってこなかったね」

アキラがベッドから飛び降りながらそう言った。


私達が部屋から出る時、隣の部屋からライリーが戻ってきた。

「エルいなかった、まだ戻ってないみたい…」

「先に食堂に居るかもしれないな」

少ししょんぼりしているライリーに私はそう声をかけた。


食堂には大量のご飯が机に並べられていた。

「すごい量だな、これバロンが貰った贈り物か?」

「あぁ。女将さんに渡したら手伝ってほしいと頼まれてな」

「それで帰ってこなかったのね」


「アタイも手伝ったんだよ、ほら、ライリー座りな」

キッチンから出て来たエルがそう言って椅子を引いた。手招きされたライリーがそこに座る。

「どうした?…さてはアキラ、野菜が苦手か?」

バロンにそう聞かれたアキラは慌てて首を振った。

「ぼ、僕もう22歳だからね!野菜くらい食べれるよ」


「これ、美味いな。何の料理だ?」

「それはアタイが作ったんだ!」

ショウの質問にエルがドヤ顔でそう答えた。

「残った野菜をエルが適当に合わせて作ったんだよ。だからそれに名前はないな」

バロンが説明を付け加えた。

「そう、エルオリジナルだ!ほら、たんと食え!!」

そう言ってエルが自分の分もショウに差し出した。

「おいお前、自分が野菜嫌いなだけだろ!ショウに押し付けるなよ」

バロンがそうツッコんだ。

「僕のも食べて!」

アキラもそれに便乗する。

「2人ともありがとう。だが、自分の分は自分で食べな。明日エイダンと合流したらここを発つだろう。ちゃんと栄養つけねぇと後に響くぞ」

ショウは受け取らずにそう言った。


「あ、そうだ。なんでエルって魔物とかモンスターとかに詳しいの?」

「そいつは随分急だね?」

突然ライリーにそう聞かれエルは少し戸惑いながらそう言った。

「エルがいない間、そういう話になったんだよ」

私はそう付け足した。


「なるほどね。アタイよりエイダンの方が詳しいと思うよ」

「エイダンが詳しいのは教会にそういう類の本があるからでしょ?エルは本なんて読むようなタイプじゃないし…」

ライリーにそう言われたエルは「失礼だな」と呟いて、少し悩み始めた。


「うーん、どこまで話すべきか迷うんだけど…。実は小さい頃少し教会に世話ンなってるだよね。

でも教会ってなーんにもないからさ。あまりに暇だから教会にある本片っ端から読んだんだよ。」

「一度読んだだけで頭に入ったのか…?」

ショウが驚きながら聞いた。

「まぁね、いつか役立つだろうって思ったからかな」

いつか役立つだろうと思う程度で莫大な知識を一変に頭に入れることが出来るのかどうか、私には分からなかったが、エルがそう言うので深くは聞かないことにした。


「エイダンといえば、彼の変わりようには少し驚いたな」

ショウご苦笑しながら言った。それにライリーは首を傾げている。

「ショウ」

エルはショウの名前を呼ぶとそっと首を横に振った。

「触れてはいけない何かなのか…?」

「人には触れられたくないものの1つや2つあるものだ」

「そうか、悪かった。なら話を変えよう。アキラ、あのダイコンにご飯を食べさせないでで良いのか?」

「うん、なんか魔力がご飯みたい」


「アキラ、名前教えなくていいの?」

ライリーにそう聞かれ、アキラはハッとした表情を見せた。

「忘れてた…、3人が先に教会に向かった間にヤポンに名前をつけたんだ」

そう言って懐からヤポンを取り出した。持ってきていたのか…。


「なんて名付けたんだい?」

エルに聞かれてアキラは少しドヤ顔で答えた。

「オロシだよ」

「正気か…?」

そう聞いたショウの表情はどこか引きつっているように見えた。

「ヤポンは気に入っているのかい…?」

エルも苦笑いでそう聞いた。オロシってまさか、前話していたダイコンオロシから来ているのか…?

「おう!俺ァバッチリ気に入ってるぜ」

ヤポン…オロシは体を揺らしながらそう答えた。

「2人は止めなかったのか…?」

私はつい、バロンとライリーにそう聞いた。

「止める?なんで?」

ライリーは不思議そうにそう聞いた。さては前の会話を忘れているな…?

「他にいい案が浮かばなかったんだよ」

バロンは少し不服そうにそう言った。まぁこの世界にダイコンオロシという物は存在しない。ヤポンも正確にはダイコンではないからそこまで気にする必要はないのかもしれない…。しかし名前をダイコンをすりおろしたものから取っていると知って、傷ついたりしないだろうか…?


「ヤポンの名前は置いとくとして、少し授業をしようか。いずれ必要になるだろうからね」

エルが空気を変えるようにそう言った。

「授業…?どんな話?」

ライリーは身を乗り出してそう聞いた。

「魔物とモンスター達の違いについてだよ」

そう言ってエルは授業を始めた。


「以前核を持つのが魔物、持たないのがモンスターだと話したね。実は、核というのは魔王が作り出したものなんだ。だから核を持たないモンスター達は魔王復活前から存在している。

一方魔物は魔王に作られた生き物なんだ。つまり魔王復活後に生まれた。そして強さは魔王が与えた魔力に比例する。

より多くの魔力を与えられた魔物は人語を解し、それによってコミュニティを築いている。つまり、村や国が出来ている。群れる彼らの事を我々は魔族と呼んでいる。

要するにこの前のアスタナドラコのような喋らない魔物より、喋る魔族の方が強い。ただモンスターはその限りではない。

何故こんな話をするかと言うと、大抵ダンジョンには魔族が暮らしているんだ。恐らく、ダンジョンは群れない魔族達の"家"なんじゃないかな。もちろん過去に人間が作った物もあるにはあるけどね」


「じゃあ次の目的地には魔族がいるってこと…?」

ライリーの質問にエルは頷いた。

「ダンジョンの前に幻想の森が広がっているのは何か関係があるのか?」

バロンの問いにエルは腕を組んで考え出した。

「どうだろうね。アタイも何でも知ってるわけではないからね。まぁそう思ってしまう気も分からなくはないがね」

そう言ってエルは笑った。

「なんて冗談は置いといて、恐らく関係はあると思うよ。家の前に柵を立てる…そんな感覚だろうね。裏を返せば、もし森が関係あるのだとしたらその中にはモンスターや魔物の類は居ないだろうね」

「逆にモンスター達が居たら関係がないことになるわね」

ライリーがそう言ったのに、エルは頷いた。


「まぁそんな事は考えていても仕方がない。アタイはもう部屋に戻るよ」

「待ってエル!私も一緒に行く!」

そう言ってエルとライリーは自室へ戻って行った。

「私達も戻ろうか」

私は残っているみんなにそう言った。

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国が危機なので勇者を召喚したら2人来てしまいました さわら @sawara_3

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