第24話 神父③

__盗賊達を倒した一行は、3人の待つ教会へ向かう__


「よかった、無事だったのね!」

教会の前でライリーが待っていた。

「エルとショウも心配してたわ、早く入って」

ライリーに急かされ、教会の扉を開けた。


「ライリーくん、怪我はないかい?」

「ええ、大丈夫よ!久しぶりね!」

「元気そうで何よりだよ」

ライリーはエイダンとの再会を喜んでいるようだったが、それを見ているバロンとエルの目はひどく冷たいものだった。


「さて、これから貴方達がたはどこへ向かうのです?」

エイダンにそう聞かれ、しばらくみんな黙っていた。

「まさか決まっていないのですか?」

誰も彼と目を合わせない。少し経ってエイダンがため息をこぼしたあと、隣の部屋へ入っていった。


[ど、どうする?エアスト村はもう出るでいいのよね?]

[訓練は無理だったが辺りのモンスターは一掃したし、もうすることないだろうからね]

[とりあえず魔王城の方向へ歩くか?]

[俺ァもっとレベル上げをしたほうが良いと思うぜ]

ヒソヒソと相談する中、突然聞き慣れない声がしてみんな辺りを見渡した。

[俺だよ、アキラ出せ!俺を解放しろ!]


アキラは慌てて懐からヤポンを取り出した。

「やっぱ旅と言えばレベル上げだろ!今のままじゃ魔王討伐なんて夢のまた夢よ!」


「それは名案ですね」

エイダンがそう言いながら、隣の部屋から戻ってきた。

「地図です。なくても困りませんが、あると便利でしょう?」

そう言って地図を広げた。

「ここが現在地ね」

ライリーが教会のある場所を指さす。エイダンはそれに頷いて応えた。


「エアスト村を少し進んだ先にまた森があるじゃん、ここは?」

そう言ってアキラが地図に描かれた森を指さした。

「ならその奥にあるダンジョンへ向かわれてはいかがでしょう?」

エイダンはさらに奥にあるところを指さした。

「行くまでが厳しいですが、中へ入れば皆様なら余裕で攻略できると思いますよ」


「行くまでが厳しいってどういうことだ?」

ショウはエイダンにそう聞いた。

「このダンジョンへ行くにはアキラ君が指さしたこの森を必ず抜けなければなりません。この森の名は"幻想の森"。深い霧に覆われ、その霧は人々に幻想を見せるのだとか。」

「幻想の森の攻略はひとまず置いとくとして、ダンジョン攻略はそろそろしてもいいかもしれんな。宿代を稼がないとならんしな」

バロンは腕を組みながらそう言った。


「じゃあ決まりね!幻想の森を抜け、目指せダンジョン攻略!!エイダンも来るでしょ?」

ライリーがそう言ってエイダンの方を見た。

「えっ」

エイダンは驚いて声を漏らした後、慌てて口元に手をやった。

「すみません、驚いてつい…。そんな気はなかったので…」

「ねぇ、一緒に行きましょうよ!エルとバロンは知り合いなんでしょう?本物の神父サマが居てくれると安心だし、人数は多い方が楽しいでしょ?」

ライリーはエイダンの手を取ってそう言った


「そう、ですね…。無茶をしでかしそうな方が居られますし私もついて行かせていただきましょう。ただ、私の代理を立てねばなりませんので1日だけ待って頂けますか?」

「急いではいない。代わりの方が来られるまで我々はエアスト村で待っていますよ」

私は彼にそう言った。



それからしばらく雑談を交わした後、エアスト村の宿へ戻った。

「幻想の森ってどうやって抜けるのが正解なんだろうね」

「まず"幻想を見る"というのは何がトリガーになっているのだろうか?魔物の一種であればソイツを倒せば抜けられるだろうな…」

「エルとエイダンなら知っているかもしれないな」

バロンがベッドの周りを整理しながらそう言った。


「エルは部屋に戻っちゃったもんね。2人は魔物とかに詳しいの?」

アキラはベッドから体を起こしてそう聞いた。

「教会にはそういう類の本が大量においてあるからな。エルは…、アイツは何故詳しいのかわからん。本なんて読みそうにないんだがな。アルヴィンは何故 か知っているか?」

「いや、知らんな…。私より君の方が付き合いは長いだろう、心当たりもないのか?」

「アイツとはくだらん話しかせんからな」


「なぁバロン、ずっといつツッコもうか迷ってたんだが…。そのベッドの周りに置かれた大量の食材は何なんだ…?」

ショウがバロンのベッド周りを指差しながらそう聞いた。

私はショウの指の先にある大量の食材に目をやった。

「なんか村の方から頂いてな。今女将さんが留守にしてるから戻ってきたら渡そうと思って…」

「すごい、モテてるんだ」

アキラがそう呟いた。

「そうだといいんだがな、残念ながらこれは違うよ。村に残ってくれと、要は賄賂みてぇなもんだよ。多分村の門番が欲しいんだろうさ」

「残るの…?」

アキラが心配そうにそう聞いた。

「まさか!考えていてくれと押し付けられただけだよ。残ろうなんて毛ほども思っちゃいないさ」


しばらくして扉がノックされ、ライリーが部屋に入ってきた。

「女将さんが帰ってきたみたいよ。1時間後に食堂に来てくれってさ!」

「じゃあ今から渡してくるよ」

バロンはそう言うと食材を持って部屋から出て行った。

「なぁに、あれ?」

ライリーが不思議そうにそう聞いた。


「明日エイダンと合流してダンジョンを目指すんでしょ?私ダンジョンに行くの初めて!アキラとショウもでしょ?」

「そうだな。そうだ、ライリーは何故エルが魔物の類の知識に長けているか、知ってるか?」

ショウにそう聞かれたライリーはそっと首を横に振った。

「私エルとちゃんと喋ったの、アキラと同じタイミングよ?ルカやバロンが知らないのなら私も知らないわ」


「え、ライリーってエルともともと知り合いじゃなかったの?」

アキラが驚いてそう聞いた。

「ええ、お城で見かけたことはあったけどね。あとはすれ違いざまに1言くらい…かな。だからなんならショウの方が私よりは詳しいと思うわよ」

ライリーに目を向けられショウは考え出した。

「何故詳しいかなんてそんな話は全く…。そういえばアキラは冒険ギルドの登録試験でエルと一緒だったろ?何か聞かなかったのか?」

「えー。確かにモンスターの説明してくれたけど、なんで詳しいのかなんて聞いてないなぁ。エルは隣の部屋に居るんでしょ?聞いてこようよ」

アキラがそう言って立ち上がったのをライリーは止めた。


「私がお手洗いから帰ったら部屋にいなかったのよ。だからここに来たの。戻る最中に女将さんに伝言頼まれてたしね」

「いないんだ…なら夕食の時間まで待つしかないね」

アキラがそう言った。

普段本など読みそうにもないエルが何故魔物に詳しいのかは確かに気になるが、私はバロンが中々戻ってこない事にも疑念を抱いていた。

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