第14話 エピローグ
あの事件から一体感が高まって、リオンとウィルバートとカイル、そしてアーシャとシャロンの五人で集まっていることが増えた。今日も一同は揃って、学園の食堂で揃って昼食をとっていた。学食といっても、リオンがいるので王族用のVIP席である。
シャロンがほっと安心したように言った。
「あの文化祭から随分平和になったわね。良かったわ」
これには同意する。しかし、アーシャはシャロンに言っておきたいことがあった。
「うん。でも私は、シャロンが囮になるなんてもう止めてほしい。あの時は、生きた心地がしなかったわ」
「そ、それはごめんね……」
「それには俺も同意だ。シャロンが無茶をするのは今回限りにして欲しい」
アーシャと目を合わせて、リオンも深く頷いた。二人ともシャロンに対して過保護なので、非常に意見が合うことが最近分かった。シャロンは気まずそうに目を泳がせながら言った。
「で、でも、帝国の暗殺者は居なくなったし。しばらくリオンは安全なんじゃないかな……」
「それはそうだけどね。でも、シャロンはやっぱり捨て身すぎたと思う」
「それにも同意だ」
アーシャとリオンにやり込められているシャロンを見て、カイルもふふっと笑っている。彼は最近ようやく少し立ち直って来たようで、笑顔が増えた。
ライザのことについては、「僕ばかりが浮かれていた。あれは多分、誰かを好きになりたかっただけ。恋じゃなかったんだ……」と言っていた。そう言う彼はとても切なそうで、あまりにも可哀想だった。だから、全員で一生懸命慰めたのだのだ。
カイルは優しいし、その上頭脳明晰で正義感も強い。きっとそのうち、必ず相応しい人が現れるとアーシャは思っている。本当に特別な人というのは、不意に現れるものなんじゃないかと思うのだ。
そんなことを真剣に考えていると、隣に座ったウィルバートが甘く微笑んで言った。
「アーシャ、口端にソースがついてるよ」
「えっ。ここ?」
「違う。反対。ふふ、こっち」
ウィルバートは嬉しそうに、アーシャの口端を優しく拭いてくれた。皆の前で甘やかされて、アーシャは思わず真っ赤になってしまう。
リオンとカイルはこの様子を見て、感心したように言った。
「それにしてもウィルが、こんなに溺愛するタイプだと思わなかったな。ウィルは、俺にはいつも厳しいのに……アーシャにだけ甘すぎないか?」
「リオンに厳しい件は置いておくとしても、ウィルは変わったなって思うよ。恋って、本当にすごいね」
アーシャは一応補足しておくことにした。
「わ、私だってびっくりしたわ。その、ウィルは『ゲーム』で恋愛した時とも……全然、様子が違うのよ?」
「アーシャを好きになって変わったから、こうなったんだよ?ゲームの僕と、現実の僕、どっちが好き?」
「そんなの……こっちに決まってるわ」
アーシャは赤くなりながらも、はっきりとそう告げた。彼女はもう、愛する人を信じることを選んだのだ。原作ゲームの情報に振り回されず、本当にこの世界を見つめて生き始めたとも言える。
ウィルバートだけではない。アーシャもまた、恋をして大きく変わった一人なのだった。
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ここまで読んで下さってありがとうございます。
少し間を置いてから最終第三部に移行します。またリオンとシャロンのお話に戻ります。
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男装して婚約破棄目指したら、何故か王太子に溺愛された話 かわい澄香 @kawaiwai
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