番外編『彼の名前はややこしい』
第44話
富潟西中学にて。
休み時間、少年漫画のノベライズ作品を読んでいると庄本がこちらにやってきた。
「庄本。この前の平って先輩は」
「もう大丈夫!ちゃんと話つけたから。運命のいたずらがない限り、空井と会うことはない・・・といいな」
「そこは言い切ってくれよ」
「僕が決めることじゃないから。それに女心ってリアルタイムで変わるし。この前風蘭が」「あと俺、もう1つ決めたことがある」
「はーまだあんの?」
「これから関わっていく人達にはこの名前で通していく」
俺はルーズリーフに『空井直治』と書いた。庄本は俺の机の上に置いてある理科の教科書を裏返し、氏名の蘭に記入されてある『空井直冶』と見比べる。
「とうとう間違われすぎてうんざりしちゃった?改名したくなった?」
「ちげーよ。高校上がったら、占える量が増えるだろ」
「あー確かに。『将来結婚する相手』とか解禁される『占い』が結構あるんだっけ」
「もう自分を占うのも、勝手に占われるのもキモい。キモすぎて耐えられねぇ」
「その名前で通せば空井のことは占えないけど、何でそれを僕に?」
「高校でも世話になるからな」
俺はにや、と笑って、進路希望調査票を手に立ち上がった。
「はぁ!?おいおいおい。あの人がいるのにいいのかよ」
「沼山先輩は関係ねぇ」
――俺が自由に生きるためには、力が必要だ。優等生という証が。俺は沼山先輩とは違う。『占い』結果が出てるからこうなるのは当たり前なんて、誰にも言わせない。
「『占い』なんてなくても、富潟中央くらい受かるって証明してやるよ」
左の袖を捲る。まだうっすらと残るベルトの跡を撫で、微かに微笑んだ。
恋と占いは片想い 椋木美都 @mitomukunoki
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