第2幕
綺麗な人だった。
男とか女とか関係なく
あぁ。美しいってこういうことなんだぁ、、、と思うほど。
その人は急に冒険協会にやってきた。
真っ黒なローブを鼻まで深く被って。
一見ただの他国から来た旅人のように見えた。
「おいそこの旅人さんよぉ」
一人の男が声をかけた
その瞬間、周りの人々がまたか、、、と思った
あの男は新入りの冒険者を見つけては格下か見定めていて、弱者だとこき使い強者だとゴマをすって媚びを売る。
おそらく、というか確実にローブの人に目をつけた
誰も助けはしない。
助けてしまったら標的がこちらに向くだけ。
―?
ローブの人は振り返った
「他所から来たもんにゃあ、、、
礼儀ってもんをおしえねぇと、なっ!」
男が急に殴りかかってきた
男はBランク、ほとんどの人はその拳を受ける羽目になる
避ける暇もない速さの拳がローブの人に降りかかる
だがローブの人は避けもせずに受け止めた。
「なっ!?」
男は驚いた顔をしていた。
―危ないよ
そのままローブの人は男の額にトンっと指を突いたと思ったその瞬間――――男はそのまま倒れた
―すみません、この方少し危ないかと思って、、、
想定外の出来事にその場が静まり返った。
「ぷっあっはははは!すごいね貴方!」
耐えきれなくなって声をかけた。他の冒険者もその人にお礼を述べた。あとからスタッフが男を拘束して連れていった。
後で知ったことだがあの男は理不尽な暴力の他に余罪があったらしく、罰金2000リャル(万)うえに冒険者ランクの剥奪だそうだ。
まぁ、仕方の無いことだと思うが自業自得なのである。
それから私はよくローブの人に話しかけるようになった。
「ね、貴方の名前まだ聞いてなかったわよね。なんて名前なの?私はエリザー!」
―、、、、
もしかして聞いちゃ行けないやつだったり?
どっかのお貴族様とか?
仕草や雰囲気が冒険者っぽくない、、、けど
うーん、、、顔がわからないから全く検討がつかない
「ごめんなさい、もし言いたくないのなら言わなくて良いわ!」
私がそう言うとローブの人はフッと小さく笑った。
―本名は教えられないけど、シルバー。そう呼んでくれたら、嬉しい
ここの国の言語では無い発音でシルバー、そう言った
「しるばー、、、?いい名前ね!」
聞いたことがない名前だが深追いしない方がいいだろう。
よろしくと言って私とシルバーは握手を交わした
それからシルバーとはよく一緒にダンジョンに行く仲になった。最初の頃はどこの出身か―とかなんで顔を隠してるのか―とか性別は―とか色々聞いてたけど、、、
―内緒。
って言うからもう何も追求しないことにした。
シルバーは本当に謎が多かった。魔術、剣術、武術全てにおいてシルバーは完璧だった。少食なくせにどれだけ走っても体力は尽きないし!どんなに喧嘩を振られても決して自分からは攻撃をしない。何も依頼がないときだってシルバーはただ散歩をして帰ってくるだけ。旅人だとは聞いていたけど疑いそうになるくらいマイペースだった。
時たま小さく笑うけど私の事絶対子供だと思って笑ってる
そんな楽しい日々をすごいしていたある日の夜のことだった。
―次の旅に出るよ
唐突だった。
シルバーが散歩に行って帰ってきたときにそう言われた。
「そっか〜もう旅に出ちゃうんだ、、、」
正直いうとめちゃくちゃ寂しいし引き止めたい。
でもそんなことしてもシルバーは行くのだろうな
―ね、満月の日の夕方にちょっと出かけようか
「ね〜シルバー?どこまで歩くのー?」
シルバーはテクテクと森の奥へ歩いていく
そろそろ歩いて一刻くらいは経ってると思うんだけど
―もう着くよ
一体どこまで行くんだか、、、
そう不貞腐れていると不意に光が差した
「え?なにここ、、、!?」
そこは花畑だった。いや、正確には蕾しかない花畑だ。
―貴方には特別。ひとつの軌跡を見せてあげる
シルバーはそう言うと、花畑の中心部に行き大きめの杖をひとふりした。
― • * ¨ * • . ¸ ¸ ♬︎ • * ¨ * • . ¸¸ ♬︎ • * ¨ *
シルバーって歌も上手いんだ、、、、
シルバーの歌声に聞き惚れていると花がぽわっと輝き出して、蕾が揺れた。
私はしゃがんでその蕾をツンっと触ると蕾が開いた。それと同時に他の蕾も咲いた。
―本当にこの1年間ありがとう。貴方に幸あらん事を
シルバーはそう言うと消えた。
最後に見たフードを取ったシルバーは――――――――
こ世界の言葉では言い表せられないくらい美しくて優しい顔をしていた。
忌みの魔女は世界を渡り歩く ⑨吉 @90kichi
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