忌みの魔女は世界を渡り歩く
⑨吉
第1幕
魔女には様々な部類が存在する
それは世界によって分けられた言葉であり実際はひとつしかない。
【魔女】そう呼ばれるだけの人と変わらない生物。
人はそれを嫌うものもいればまた、その逆も然り。
人の生き方に自由があるように魔女もまた同じなのである。
これは世界を渡り歩く【魔女】のお話
それは突然の出来事だった
国と国の戦争に俺たちの村は巻き込まれた。
俺の村は貧困が激しく1日を生きるのでさえ苦労するほどだった。戦争の準備だとか言って俺たちの食料を全て奪っていきやがった。やせ細った子供や老人は進んでいく時間とともに死んでいく。村のヤツらが生きる希望を無くした。
そんなとき、ふらりと歩いてきた女か男かも分からないローブを被ったやつがやってきて食料を配った。
「ぁ、あんた、誰、だよ、俺たち、に、こんなこと、しても、得になん、ねぇぞ、、!」
そいつはキョトンとした(ように見えた)顔をした後に手を差し伸べ、フッと笑ってこう言った。
―人を助けるのに理由なんてあるのかい?
この世は弱肉強食。助けるなら見返りを求めるのんじゃねぇのかよ?
今まで出会ってきた奴らはそんなクズばっかりだった。
村の為にとやってきた商人たちだってガキ共を攫って人身売買に利用したり、倉庫の食料を根こそぎ奪って行ったり。
だけどこいつはこれまでの奴らとは違うように感じた。
こいつのことは信用してもいい気がする、、、、、。
俺はそいつの手を取った。
それからそいつは数日間滞在していた
相変わらず顔の見えない真っ黒なローブを着て。
「おい、あんたに頼みがあるんだが、、、、ここにいる餓鬼共に勉強を教えてやっくれねぇか。頭さえ良けりゃあこいつらは自由に生きれるし、好きな職にだってつけるだろ」
そいつは首を縦に振った。子供たちはそいつを〚先生〛と呼ぶようになり、俺や村の住人たちもそう呼ぶようになった。
昼の鐘がなるまでは勉強を教え、昼飯を食い終わったら生きるための技術を学んでいった。
餓鬼共だけじゃなく村の大人組も暇あれば一緒に話を聞いていた。野菜や穀物をどう良くすればいいのか、強固な家を作るにはどういうことが必要か、敵が攻めてきた時の相手の急所など俺たちに必要なことを教えていた。
何時でも見返せるように、字が読めないやつでもわかるように先生は木札に書き残してくれた。
先生は剣術にも長けていた。
村1番とされていた剣士にも圧倒的強さで勝利した
俺たちが一日かけて5本の木を切っても先生は50本の木を横の枝まで綺麗に切っていた。
「すげぇけど、ちょっと、、多いんじゃねぇか?」
そう言ってツッコムと驚き慌てふためいていた。
先生はちょっと抜けてるところもあった
気づけば半年が過ぎていた。
俺たちの村は当初とは見違えるほど整備されていた。
「やっぱり先生はすげぇな」
先生は横に首を振って言った
―村の人達が故郷を変えたい気持ちがあったから、これは君たちで変えた運命。
「そうだな、ありがとさん」
そう言って俺はニカッ!っと笑った
「そういえば後どのくらいここに滞在しておくんだ?ま、俺としちゃあここに住んでもいいくらいだけどあんたはそうしたい訳じゃないだろうし」
先生は夜空を見上げて言った
―次の、満月の日、かな
そして満月の夜、先生は村人全員にお礼の言葉を言って周った
"せんせー!また来てねー!!"
"次は絶対勝つからぁ!"
"今までありがとう"
先生を送るための宴が開かれ、最後に先生が贈り物をすると言った
―これは大切なものたちへ送る軌跡。貴方たちに幸あれ!
先生が透明なガラスが木の先端に浮いてる棒を取り出してそれをひとふりした。
すると空から淡い金色の光が舞い降り辺り一面が花畑になった。光が舞い降り終わると元の村の風景に戻った。
もう既にそこの先生はいなく、夢だったかのように思えた。
こんなにあっけないものなのかと疑ったが先生にとってはそれが当たり前だったのだろう。
「先生、ありがとな」
一瞬見えた先生の顔は優しい人の顔をしていた。
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