第32話 ビット
「あの、助けて欲しいのは私達も同じで……」
苦しそうにしている仲間達の方をちらりと見てから、りんりんはビットに答えた。
「それについてはこれを使って下さい」
「何ですか?これ?」
「簡単に説明すると、薬ですね。プロモン達に軽くシュッと一回かけて下さい」
チェーンの限界まで開いたドアの間から、ビットがスプレーを一つ、りんりんに手渡した。
「…………」
「怪しむ気持ちは分かりますが、時間が無いのです。どうか信じて下さい」
「…………」
「今、貴女の仲間達と同じ状況に、他のプロモン達も陥っているのです」
「え!?」
「今、その件で運営に報告が殺到しています。りんりんさん、プロモン達が苦しみ始めてから私が薬を持って来るのが早すぎる理由や、薬をりんりんさんにお渡しする理由等は後でお話しします。どうかスプレーを使って下さい」
「…………少し待って下さい」
りんりんはインターネットで検索をかける。プログラムモンスターを遊んでいる配信を開き、配信に映っている苦しんでいるプロモンの様子や、その配信のコメント欄を見て、りんりんの仲間達と同じ状況に陥っている他のプロモン達の存在を確認する。
「……」
ビットを信用して良いのか、りんりんは考えた。仮にビットが悪人ならば、ビットがりんりんの元に来たタイミングを考えると、他のプロモン達が苦しみ始めたのもビットの仕業だろう。もしもそうならば、ビットはスプレーを介さずともりんりんの仲間達に何かを仕掛けられたはずである。つまり、ビットが悪人の可能性は低い。
「……」
プロモン達が苦しみ始めてからビットがりんりんの元に来るまでの早さ。ビットがスプレーをりんりんに渡す理由。プロモン達が苦しむ原因。仮にスプレーが本当に薬だとして、それを何故ビットが持っているのか。
分からない点は多い。だが、ビットは悪人ではない気がして、りんりんはビットを信じてスプレーを使う事に決めた。
りんりんがいぬいぬに近づき、スプレー缶のボタンを一度押すと、シュッ、と音を立てて噴射された液体がいぬいぬにかかった。
「……いぬいぬ?大丈夫?」
「ワ……ワン?……ワン!」
「おお!!」
元気に尻尾を振り出したいぬいぬを見て、りんりんは他の五匹にもスプレーを使う。次々に元気を取り戻す五匹を見て、りんりんは一安心した。
「ビットさん、ありがとうございます!」
「礼には及びません。りんりんさん、今度は私とプロモン達を助けて下さい」
「ええと、何をすれば良いのですか?」
「移動しながら説明します。うまうまさんだけ残して、他の仲間達は一度プロモンカードに入れて、私の後をついてきて下さい」
急ぎますよ!とビットが口にする。りんりんは指示に従って五匹のプロモンをプロモンカードに入れて、ビットの後をうまうまと共に追った。
プログラムモンスター~プログラムは生きていますか?~ 黒子明暦 @kuroko-meireki
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