第31話 姉妹

 昼だというのにカーテンを開けていないのでとても暗い部屋。そこにボク。ルエール・フェクシオはいた。

 ベッドの上で両膝を手で抱えて座っていて、顔色は悪く体調はよくない。 魔物討伐の任務も断って部屋に閉じ籠っている。

 なぜこうなっているかというと昨日の兄さんが家でしたことが原因だ。あのあとナタリーと母さんは泣いてしまうし、父さんはなにも言わずに部屋に戻ってしまった。


「……ボクのせいでこんな風になっちゃったのかな……」


 そうだ。ボクが勇者に、いやいなければ、家族の皆はこうならなかったのかも知れない。そう考えるとまた気持ちが落ち込んでしまう。


『ルエール……』


 遠くに置いておいたボクの勇者の証である聖剣スペラが心配そうに呟いた。ごめんだけど、今日は誰とも話をしたくない。

 そう思っているとコンコンと弱々しくドアを叩く音がする。誰だろうか。


「お姉さま……」

「ナタリー……?」


 ドア越しに声が聞こえる。誰かは一瞬で分かった。だがなんの用だろうか。


「ねえ、開けて。話したいことがあるの」

「……分かったよ」


 大切な妹の頼みだから仕方ないと考えドアまで歩き、開ける。すると。


「お姉さま……!」

「わっ」


 ナタリーが抱きついてきた。酷く不安定でなにかを心配するような顔をして。


「ど、どうしたんだい?急に」

「……だけは」

「え?」


 小声で言ったのでよく聞こえなかったのでよく反応ができなかった。すると。


「お姉さまとお兄様だけは、私のこと、愛しくれるよね……?」

「っ!」


 そう泣きそうな顔で言う。ボクはそれを見てナタリーを抱き締めた。


「お父様もお母様も……お姉さまだけ見てるから。私を愛してくれる家族は2人しかいない。それで心配になっちゃって……」

「大丈夫。大丈夫だよ」


 安心させようとよりいっそう抱き締めて頭を撫でる。だが声の震えは止まらない。


「じゃあお兄様は……?お兄様ってば、また怒ってどこかに行っちゃった。もしかしたら、もう会ってもらえないかも」

「ボクが何とかするよ」

「え?」


 確信を持って言う。最愛の妹がこんな風になってるんだ。ボクが勇気を出さないでどうする。


「ボクが明日の朝、兄さんにちょっと話そうって言うから」

「こ、断られちゃうかもよ?」

「うーん。最初はなにか言ってくるかもしれないけど最終的には頷いてくれるよ。兄さんってボクたちに結構甘いからね」

「……ふふ。確かに!」


 ナタリーが笑う。不機嫌そうに文句を言いながらボクたちと話す兄さんの姿が頭の中で浮かんだのだろう。


「それじゃ、今日は明日のためにもう休みなよ」

「うん!ありがとう!お姉さま!」


 そう言いナタリーは部屋から出ていく。さっきとは打って変わって楽しそうに笑いながら。


「よし。それじゃあボクも準備しなくちゃね」


 兄さんを説得する言葉を考えなくちゃ。そう考えながらカーテンを開ける。さっきまでは日差しが邪魔くさかったが、今はそれが心地いい。


「よし!じゃあスペラ!君も一緒に明日のこと考えてくるかい?」

『っ!ええ!そうこなくては!この聖剣の力を貸しましょう!』

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偉大なる勇者の双子の兄 タクヤ @yakutarahabie

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