第30話 食事
「ここが私のおすすめのお店よ!」
店の中の完全な個室で自信満々に言う。王都にいた時に僕も来たことがある大きな立派な店。他の貴族も行くと言っていた記憶がある。
それはいい。だが
「ここが王女様がお気に入りの……」
「楽しみー!」
「何でお前らがいるんだよ」
なんか楽しそうにしているフラムとクロフに難色を示す。するとシュテルがクスクスと笑った。
「なに笑ってるんだ?」
「ふふ。いえ?私は一言も2人で行くとはいってないし。そこまで不機嫌になるなんて、そんなに私と一緒に行きたかったんだと思って」
「……うるさい」
顔をそらす。そんな反応をしてしまったので邪魔物2人が面白いそうなものを見る目をしていた。ムカつく。
「まあまあ。そんなことより早く頼む料理を決めちゃいましょ」
そうを聞くと冒険者2人はメニュー表を見始めたので僕もしぶしぶながら気持ちを切り替えた。
「う。これ全部高いっすね……」
「シュテルが払ってくれるんでしょ?なら遠慮なく頼みなよ」
「そいうのって奢る人以外が言っていいもんなんすか?」
「ジェロアお兄ちゃん!私このパンケーキ食べたい!」
クロフが元気よく言う。僕はその発言を聞き少しは鼻が利くと感心した。
「いい選択だね。ここのパンケーキは美味しいよ。僕も久しぶりに頼もうと思ってたし」
「そうなの!?じゃあそれで!」
「俺も決まったすよー」
「そ。ならさっさと頼もう」
僕はベルを鳴らし、来た店員にそれぞれの注文をするがシュテルだけはいつものとだけ言った。
そのあとは頼んだものが来るまで他愛もない話をする。するとどうやら来たようで店員が注文品をテーブルに並べていく。どうやらフラムはステーキを選んだようだ。
「おお!うまそうっすね!」
「うん!3人のは美味しそう!」
そう3人の。そう言う通り1人の注文を除いて美味しそうだ。
「それで泥棒猫のお姉ちゃん。それ、なに?」
「ん?食べ物よ?」
「そういうことじゃなくてね……」
フラムは微妙そうな顔をする。それはそうだろう。だってシュテルの前にあるのは、グツグツと赤黒く煮立っているとても辛そうなスープだからだ。
「相変わらず、辛いものとかいうこの世界にいらないのが好きみたいだね」
「あら。その歳になって好き嫌い?私があーんして克服させてあげましょうか?」
「そういう次元じゃないし。それを僕の口の中に入れたら絶交するから」
僕は辛いものと苦いものが大嫌いだ。この世から消え去ってほしいとも考えている。
「ていうかなんで辛いものなんて食べるんだよ。気でも狂ったとしか思えないね。フラムもそう思うでしょ?」
「奢って貰ってる立場なんでなにも言えません」
「私はそうおもーう!」
そんな話をしながら食べ始める。相変わらずここのパンケーキは美味しい。クロフと僕は笑顔になり、、フラムとシュテルも満足そうな顔をする。シュテルはマジでなんなんだよ。
こんな風にしていると昔、兄妹3人でこの店に来たことを思い出す。だが懐かしくも悲しくなる記憶に蓋をした。僕が一方的に仲を壊したんだからそれで幸福感を感じてはいけないと考えて。
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