現代の勇者たち



ダンジョン攻略のクエストに参加したゼクスは、仲間たちと共に準備を整え、いよいよ「忘れ去られたダンジョン」に向かうことになった。彼は意気揚々としながらも、内心では「本物の魔物」との戦闘を期待していた。


「みんな、準備はいいか?さあ、行こう!」ゼクスは高らかに声を上げ、仲間たちを鼓舞した。


レオが不安そうに言った。「ゼクス、待て!まずはダンジョンの入る前に、戦闘の作戦を立てるべきだ。」


「作戦?もちろん、魔法使いとしての力を発揮すれば大丈夫だと思うけど…」


「いや、そうじゃなくて、ちゃんと役割分担をしよう。俺が前に出て敵を引き受けるから、ゼクスは後ろから攻撃をサポートしてくれ。」


ゼクスは心の中で思った。「本当に戦うのはゲームの中だけかもしれないが、これは魔物との冒険のはずだ。」


「了解!僕は後ろから全力でサポートするよ!」彼は自信を持って答えたが、レオは少し戸惑った様子だった。


ダンジョンの入口に近づくと、エリナが興奮した様子で言った。「これが忘れ去られたダンジョンか…期待が高まるわね!」


ゼクスも気分が高揚し、何気なく魔法の詠唱を試みる。「火の精霊よ、我が手に力を!」しかし、周囲の空気は特に変わらない。彼の魔法が発動する気配はなかった。


「おい、ゼクス。何してんだ?」カイルが不思議そうに尋ねた。


「え?魔法を…あれ?やっぱり、まだ慣れないみたいだ。」


「慣れないって、ただのゲームだぞ。」カイルが冷静に答える。


「え、そうなの?」


仲間たちはすでにダンジョンの中に入っていった。ゼクスはついて行こうとしたが、少し焦ってしまった。


「待って、これって本当に冒険なのか?魔物と戦うわけでは…?」


ダンジョンの中は薄暗く、神秘的な雰囲気に包まれていた。レオが先頭に立ち、慎重に進む。「気をつけろ、何か出てくるかもしれない。」


その言葉が終わるか終わらないうちに、突然目の前に「スライム」のグラフィックが表示された。


「スライム…?なんだこいつは?」ゼクスは驚きの声を上げた。


「お前、スライムがなんだと思ってるんだ?しっかりやれ!」レオが指示を出しながら、剣を振り上げた。


「えっと、僕は…火の精霊よ!」ゼクスは慌てて魔法を唱えるが、彼の前に現れたのはスライムのグラフィックで、実際のモンスターとは程遠い。


「ゼクス、早く攻撃しろ!魔法を使え!」カイルが叫ぶ。


「うん、わかった!…でも、なんでスライムなの?」ゼクスは混乱しながらも、魔法を放とうとする。


仲間たちの期待とゼクスの混乱が入り混じる中、彼は一生懸命に攻撃を試みるが、結局スライムがゲーム内のキャラクターであることに気づいていなかった。


「こ、これが現代の冒険か…?」彼はますます混乱する一方だった。


スライムとの戦闘はあっけなく終了し、仲間たちは勝利を祝った。しかし、ゼクスは現実とゲームの違いにますます戸惑いを感じていた。


「これ、本当に冒険なのか?それともただのゲームに過ぎないのか…?」


ゼクスは心の中で葛藤を抱えながらも、仲間たちと共にダンジョンを進んでいった。彼の頭の中では、すれ違いが繰り広げられる一方で、彼の冒険はまだまだ続くのだった。

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