カボチャランタン

鈴ノ木 鈴ノ子

かぼちゃらんたん

 ハロウィンのカボチャランタン。


 ジャックオーランタン。


 カレンダーの写真に私は憧れを抱いた。


 カラーテレビが普及して、我が家にもようやく現れた。


 総天然色、なんて言葉があった時代。


 カボチャは皆んな緑色、緑の葉っぱに緑の実。


 お婆ちゃんに頼み一玉を畑で摘んで持ち帰る。


 緑の輝く立派なカボチャ。


 固くて固くて立派なカボチャ。


 包丁では歯がたたず、ナタでゆっくり割りました。


 タネをスプーンで掻き出して、彫刻刀でゆっくりと掘り掘りしてゆく、あの顔を。


 小さくなった蝋燭を、仏壇より頂いて、そっと灯してみたのなら、かぼちゃのランタン出来上がり。


 少し色は違うけど、形も少し違うけど、立派な立派なカボチャランタン、ジャックオーランタン。


 翌朝じっくり眺めては、行ってきますと手を振った。

 

 帰ってきたなら姿なく、私は探すカボチャのランタン。


 再会したのは夕食で小鉢の中におりました。


 食べてあげるが供養だと、ほくほく湯気のカボチャの煮物。


 お婆ちゃん秘伝の力によって、硬いカボチャは甘くなる。


 少し寂しい気持ちはあるけど、家族揃った食卓はランタン灯る暖かさ。


 今は私がお婆ちゃん。


 孫は元気な男の子、ハロウィングッズを買ってきて、お部屋にペタペタ飾り付け。


 ジャックオーランタンも電池1つでピカピカ光る。


 私はしっかり吟味した、カボチャをぐつぐつ煮込んでは、小鉢に盛り付け夕食へ。


 お婆ちゃんのレシピはあるけれど、あの味には届かない。


 ランタンの中に隠された、懐かしの味は見つけれず、カボチャランタン眺めては、懐かし思い出に浸っている。


 ハロウィンの仮装した可愛い孫が、スマートフォンの画面の中で笑っている。


 カレンダーの写真に私は憧れを抱いたまま。


 ジャックオーランタン。


 ハロウィンのカボチャランタン。

 

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カボチャランタン 鈴ノ木 鈴ノ子 @suzunokisuzunoki

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