第75話

 半壊した青の艦隊が巨大化したミカエルのガイドビーコンを頼りにミカエル内部に入って来る。


 ミカエルも破壊されて打ち捨てられた艦隊やスローターギアのブルーマーカー達を救い出し、ナンバーズ達を治療させる事に成功し、タクティカルマキナ達のスロータートルーパーの人数を大幅に引き上げた。


「要塞への収容ありがとうございます」

「別に構わないわよ。こっちの艦隊が早く動けないから無駄に消耗させてしまったけど、そこはごめんなさいね」


[ラトナ、青の連盟艦隊の改修には5日ほど時間を頂きます。乗員はアルヴァドーンに一度入って頂きますね]

「エクレアさんとこの怪我人は治療ボックスに入ってちょうだい。軽い怪我や腕や足の損傷なんかでも問題無く治せるわよ」


「それは凄まじい技術ですね」

[ミズエクレア、艦隊改修時に色々と技術を移転させますのでブリーフィングルームへどうぞ]


 月の自動防衛システム・エイブスが作動して青の連盟の数が減る中、青の連盟艦隊は改修を受ける為にミカエルのドックに入り、月の裏から来た艦隊はミカエルに攻撃を仕掛けるものの相手が悪かった。


 既に捕食強化機能が有るミカエルに攻撃が当たるたびに分厚いナノマシンの層が活性化してヘブンリーライトが月の防衛システムを次々と焼き、今度こそナンバーズのナンバー1アルバトロス率いる月の艦隊は壊滅してミカエルに捕食された。


 ラトナ艦隊は最後の戦いを終えて月の裏側に有る巨大なAIクライ・ムーンのもとに向かって移動を開始する。


 先行する巨大化したヘブンリーライトの超光熱に月の表面の自動防衛システムはことごとく破壊され、ジャッジメントで装甲は溶け、ラトナ艦隊は最終地点の月の裏側に到着する。


 そして、この事件の真相がAIクライ・ムーンから伝えられた時、ラトナ達は驚きとともに酷く落胆した。


[我が名はクライ・ムーン。オペレーション・アルティメイトにより、今から滅ぶべくして滅ぶ人類から、選別された人類を再生する為に貴方達を選び、ふるいにかけ、そして、方舟アトラファシースに乗せて次代へ送る為に我はある]

「クライ・ムーン?オペレーション・アルティメイト?もっと詳しく説明してくんない?」


[貴方達は戦いと生存を繰り返した者であり、究極の人類を生み出す我の意志により選別された]

「なあ、クライ・ムーンって言ったっけか?今から俺達の世界が滅ぶべくして滅ぶって言ったが何故なんだ?」


[貴方達が持っていた携帯端末の情報により我は滅びゆく地球の全ての情報を得た。そして、それを精査し、この終わる世界を生きるに相応しい者達と判断する]


「うーん、全く質問の答えになってないが、俺達の地球は滅ぶって言うのか?」

[その可能性は高い。中国、ロシア、アメリカに中東諸国から様々な国からの核ミサイルで地球は滅びる。貴方達は方舟アトラファシースに乗って地球の再生に尽力してほしい]

 

「うーん、確かに核ミサイルでって部分は分かるんだ。だけどさ、それってさ、もっと未来の話だよね?」

[残念ながら、地球上での戦争は既に始まっている。貴方達の通って来た道には沢山の人々が転移させられているのに気付きませんでしたか?何故、クレイジーデスワールドにタクティカルアーマーや宇宙への技術が必要だったかを貴方達は考えましたか?]


「やっぱイエローマーカーって普通の人間だったんだね」

[ラトナ、最大望遠で地球が火の海となっています。これは……核戦争]


[そう、核戦争は既に地球で起きた事象です。砂漠、サバンナ、熱帯雨林、荒野……そして宇宙。貴方達は選ばれた。そしてまた、イエローマーカー達も選ばれた人間です]

「地球は既に核戦争で滅びたと?クライ・ムーン」


[そうです。既に地球は核戦争で滅びました。貴方達は方舟アトラファシースに乗って新しい世界を生きるのです]

「おいおい、ちょっと待てよ。確かに人類ってのは馬鹿が多いけどよ。本当に核戦争なんて起こり得るのかよ!」


 月の防衛システムのエイブスを潜り抜けて月の裏側に存在したのはミカエルよりも巨大な方舟アトラファシースと進化型AIのクライ・ムーンであった。


 今までの全てがオペレーション・アルティメイトのプログラムによって新世界を創り出す為の茶番だった事にラトナ達は怒り、そして核戦争後の地球を見て落胆する。


 今までの戦いは全て新しい世界に適応出来る人間を選別して方舟アトラファシースに乗せ、新たなる世界に向かう事が出来る人間を選別するだけの話だったのだ。


 ラトナ達は数千人まで減少した状態でミカエルごとアトラファシースに乗り、コールドスリープをした。


 選ばれた人間は地球再生までの長い時間をコールドスリープで過ごし、地球にはナノマシンでの汚染浄化が開始される。


 遥か未来に地球には新しい命と文明が生まれては消え、地球内にはナノマシンが充満し、ナノマシンのコードを使える新人類が誕生して方舟は地球に降り立った。


 そこでラトナ達は神として崇められ、コールドスリープ中に精神や身体をナノマシンで強化された肉体で永く新人類達をまとめて方舟アトラファシースで新世界を渡り歩き、数多くの技術を伝えて伝説となり、最後には自らが争いを生まぬ為に深い海の中に消えた。


 何処かに神の残した技術と方舟が沈んでいる事を後世に伝える為、数多くの遺跡を造り、ラトナ達は今も海の下で新人類が方舟を見つける事を待ちわびている。


 そして、月の防衛システムで有るエイブスは方舟アトラファシースの帰還を待ちわびている。


 ここでラトナ達の物語は終え、新しい物語が生まれていくだろう。



終わり

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