第8話 金白さんは諦めない

クレープを食べ終わって、僕たちは時間もちょうどいいということで解散した。


家の方向…いやほぼ一緒に住んでるため玉萌と一緒に帰ることになっている。


妲姫は鯛好さんと帰るようでなんか楽しそうな雰囲気してたけど…まぁロクなこと無さそうだ。


場面は変わりと言いたいところだが、さっきから玉萌の様子がおかしい。何か考え込んでいるような気もする。


「どうした?なんか悩み事とか…。」

「………。」


声をかけて見たが、反応がない。

何か気に障るようなことでもしたのか…。いやそんな記憶が全然ない。


「晴明さん。」


「はい、なんでしょう?」


「妲姫さんはとはどのような関係なのですか。」


彼女は不安げな声で僕に聞いてきた。

アイツとの関係と言われても正直何とも言えない。友達と言うべきか、はたまた腐れ縁の1つと言うべきか…。


「恋愛的な…「違うから」」

「「………。」」

「え?付き合っ「違います。」」

「「…………。」」

「「え?」」


やっぱり玉萌は勘違いしていたらしい。今日の行動を見れば色々と繋がってくる。


よく分からんプロポーズをするような彼女が、好き好きオーラ全開な姿勢なら妲姫の奇行を怪しむのもわかる。


ん?そう考えてくると今日の玉萌って嫉妬しながらアピールで対抗しようとして…。


「晴明さん。週末空いてますか?」

「今週末?一応空いてはいる。」


俺は予定を確認しつつ答えた。


すると玉萌は急に俺の目の前に立ち止まった。


「じゃあ、私と。デートしてください。」


冗談なのでは?と思ったが彼女の目を見るに本気なようだ。流石にいつものような感じで答えるより、真剣に伝えるべきか。


「いいよ。」


俺の考えは決まっていた。勘違いさせてしまったことに申し訳なさを感じていたのもある。


まぁ俺が言わなかったのも悪いと思うが、大体あのバカが紛らわしい行動するせいで…。


とはいえ、俺が即決したので予想外の速さに彼女は驚いた顔をしたものの、嬉しそうに顔を赤らめている。


「えへへ。晴明さんとデート…♪」


上機嫌の彼女からは歌うように幸せを表現する。


「どこに行くのかは決めているのか?」


俺はスマホで時間を確認しつつ彼女に聞く。


「ふふーん。それはですね…。」


彼女は勿体ぶるかのように自身のカバンの中をゴソゴソと漁る。そして、何かを見つけたようで意気揚々と中身を取り出し俺に見せつける。


「じゃーん!こちらは特別な夜の水族館チケットです!」


………。なんだその特別な夜って。水族館の夜なんて行ったことないから知らないんだが。


「なんとこちらはですね!夜の時間人数が限定チケットなのです。水族館らしい花火、ライトアップ。そしてなにより!水族館の生き物はちゃんとお休みなので昼に見ることという優しさ。」


「そりゃ、夜まで働かせられたらブラックすぎるだろ。」


「そ、し、て!カップル限定のペアストラップが貰えるんです。」


なるほど。それが目的なのか。だが…。


「ころはカップル限定だぞ。そもそも俺たちは恋人じゃない。」


「それはそうです。私たちは夫婦なのですから!」


「何を言ってんだ?いつから俺たちは夫婦なんだよ。」


「それは会った時からです!!」


「理不尽だろ。目と目が合ったらポ○モンバトルみたいな事起きるかよ!」


まぁこんな言い合いしてたって仕方がない訳である。俺が誤解させてしまったのが悪いし今回だけだ。


「それで今週末だから日曜日か?」

「はい!水族館デートですね♡」

「そ、そうだな。」


不覚にも彼女の笑顔に胸が熱くなった。ほんと、こいつの笑顔には勝てない気がする。


「さぁ、そうと決まればあとはその日までわくわくして待つべし!早く帰りましょう晴明さん!」

「あぁ、そうだな。周りも暗くなってくるころだしな。」

「はい!お義母様とお義父様が首をながーーく待っていることでしょう!」


それはそれで怖いぞ。そこまで長く言われたらもはや人ですらない気がするが。


俺たちはこの後も他愛のない話をしつつ、家へと向かった。この2人の姿はまさに幸せな夫婦の温かな空間。

あの高名な呪術師と人々から恐れられ騙しに騙し続けた狐が仲良くしているなどと昔の者たちからは想像もつかない世の中である。

やがて2人は愛を知り、その模範となった者たちへとこう告げるだろう。


「「ただいま!!」」


---------------------

玉萌視点(同時刻)


晴明さんと水族館へ行くと約束して、帰路の途中楽しい空間で私は少し不安もあった。

『水族館』

大事な思い出の一つ。

私にとって大切な人と歩んだ場所、学んだ世界。そして、初恋の味。

どれもこれも忘れられない。

でも…今では私だけしか知らない。

あの日、出会えただけでも奇跡だった。

直接話しかけられずとも視界に入っただけでも良かった。

だから、今度は私が自分で奇跡を起こせるようになりたい。

私は、また嘘をつくのです。

今はまだ…ですけど。

それでも、金白さんは諦めないのです!

君とまた、心から笑い合えるように、、

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

嫁入り狐の金白さん 一ノ瀬詩音 @sion05

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ