輪廻
彼岸華
1の世界
○月✕日
世界ってのは不思議だ。
宇宙っていうバカでけー空間の中に、ポツンとオレたちの立っている地球っていう丸っこい星が浮かんでる。
空を見上げたら真っ青な空が見えるけど、あれも全部空中に浮いてるチリとかが日光を反射して青く見えるんだってよ。
夜になったら綺麗なお星様がキラキラ光ってる。
そういや、この前地球の人口が70億人を超えたってニュースを見た、そのうちの10分の1が、腹空かせてるんだって。
戦争とか、宗教とか、考え方とか、住んでる地域、とかそういうめんどくさい事が沢山関係してきてるんだって。
その中でも宗教ってのは大変だ、宇宙は神様が作った、世界そのものが神様だ、みたいな話はよく聞くけど、中には宇宙は何億何兆も存在していて、それを管轄してるやべー存在がいたりするんだって、スケールがデカすぎてワケわかんねぇよ。
そういう神様はすげぇって考え方があるのに、なんで人間ってのは自分たちが偉いって考えてるんだろうな、火星にも行けてないくせに。
果てには、昆虫とか、海とか、オレたち人間の体まで、ぜぇんぶ解明されてないんだってよ。
世界は謎だらけだ、戦争も宗教も、生も死も、オレの今日の晩飯が嫌いなキノコ、それもいちばん嫌いなエノキで作った献立だったことも、1番後ろの席でバレないように寝てるのに黒板に向かってる先生がノールックでチョークを飛ばしてくるのも、全部が謎だ。
オレが思うに、世界ってのは全部誰かの作った妄想なんじゃないかって思う、オレもよく色んな妄想をしてるからよ、オレの頭の中にも宇宙があるんじゃねぇのか?
うお、これぞ真理、オレ天才かも。
だったよ、オレが最強になった世界とかえっちなお姉さんたちに囲まれる世界とかもよ、今頭ん中で作っちまえばいいんじゃねぇのか!?
って思ったけど、今いるこの世界は何も変わんねぇもんなぁ…、虚しいだけだしやめるか…。
にしても世界って、不思議だよなぁ。
「ねぇ、何書いてんの?」
「昨日YauTubeで宇宙についてって動画があってよ、1時間ぐらいする動画だったけどつい面白かったから最後まで見たら、色々オレも考えてみようかなって思ったんだ」
「へぇ、あんたにしては面白そうな動画見るじゃない、あとでリンク送ってよ」
「いいけど、でもお前どうせ見ないだろ、オレには色んな動画送ってくるのに 」
「いいじゃない、あんたの送ってくる動画全部面白そうじゃないんだもん」
「それより書いたの見せなさいよ」
「え、おい奪うなよ!まだ書いてんだから」
「なによこれ…全然書いてないじゃない、世界について考えるって、あんたにしてはかっこいい事言っておいて、たったこれだけ? 前半ほとんど日記みたいだし、カ○ヨ○とかで小説家に憧れた小学生たちが書いた二次創作ぐらい短いじゃない。」
「そんなに言わなくてもいいだろ!お前が奪ったんだから…」
「奪っても奪わなくても変わらないわよ、なによ世界は誰かの妄想って」
「妄想かもしんねぇだろ!、そりゃ数学とか科学とかそういうので言ったらよく分かんねぇけど……それでも妄想だったら妄想で完結するじゃねぇか!」
「…はぁ…、まぁ、あんたらしいわね、そういう考えも」
「いいんじゃない?好きに妄想すれば、最強になってハーレム作ってる妄想をすれば、現実じゃあモテない頭悪い字汚い、言えば言うほどでてくるわ」
「…そんなに言わなくてもいいだろぉ、オレだって傷つく時は傷つくぞ」
「そう言って、どうせ四限終わったらすぐにお昼ご飯食べていつもつるんでるうるさい男子たちとおバカ同好会するんでしょ」
「バカって言うな!オレたちはこう見えても体育じゃ成績いいんだぞ!」
「運動神経が良いだけじゃない……全く、そういう所よ?」
「ほら、もう四限始まるから、その汚い妄想おバカノートなんてしまって準備しなさい」
「お、そうだったな…っておい!なんだよ頭の悪い汚い妄想おバカあほノートって‼️」
「そこまで言ってないでしょ…、それに、あほって言葉はバカと同じ意味よ、方言よ方言」
「そうなのか?知らなかった、…ってあれ、消しゴムがねぇ、消しゴム鉛筆野球してた時になくしたのか?」
「何よその頭の悪い遊び…いい加減高校生って自覚を持ちなさいよ…、はい、消しゴム、ないならこれ使って、あんたに貸してあげるすごーく優しい人なんて私ぐらいだからね?」
「お、いいのか?悪いな、ありがとう‼️」
「いいのよ、後で返してくれれば、私も席に戻るわね、寝るんじゃないわよ?」
(全く…あんたの面倒を見てあげられるのは幼なじみであるすごーく優しい私ぐらいなんだから…感謝しなさいよ?このおバカさん)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
心電図の電子音がゆっくりと鳴っている。
窓からは暖かい初夏の空気が流れ込んでくる。
異常気象が続く21××年の現代で、数十年に一度ぐらいのペースで訪れる稀に見る涼しい気温だった。
「なぁ、あずき」
「なぁに?けんじ」
「この前さ、地球の人口が300億人を超えたんだって、火星の人口は100億人………もうすぐ地球の資源が完全に枯渇するらしいよ、今は金星と水星で暮らせるようになるための準備が最終段階に移行したから、資源が枯渇したら山とか全部崩してエネルギー生産のための工場を沢山建設するんだと」
「へぇ、最近はそんなに発展してるのねぇ、昔はAIがおバカな会話をしていてみんなで笑ってたのに、人類はまだ、神様がいるかいないかの考え方の違いで争ってるのかしら?」
「いや、最近は全ての宗教の祖先は同一だったって説が有力らしいよ、その宗教じゃ、神様っていうのは世界そのものであり、その時代を代表した人間でもあり、過去の文明で星と一体化した生物なんだって、全ての考えが存在してたんだ」
「…なんだか、今じゃ考えられないわね、でもそういうものを明かしてもいいのかしら?…もちろん、戦争が無くなることはいいことよ、でもそれは70年前の世界政府樹立以降ほとんど無くなったわ、これ以上、受け継がれてきた考え方が変わってしまってもいいのかしらねぇ」
「受け継がれてきた文化はもう、ほとんどが残っていないよ、日本も80年前の第三次世界大戦で爆撃を受けた結果、重要な神社仏閣は焼けてしまった、その後忙しかった10年間は手入れもされずに放置されたところがほとんど、その後世界政府が樹立しちゃったから、宗教などの文化よりも未来に対する考え方が強くなってきたんだ。」
「それに今は、進化したAIが人間と共存していて、方向の違いで対立しそうになっても、いい方向に解決してくれる、結局、シンギュラリティは訪れても人類がAI反逆されることは無かったよ。受け継がれてきた文化は滅んだわけじゃないし、しっかりと今でも残ってる、ただ形として受け継がれていないだけさ、資料や歴史を学ぶ大事な教育資材になっている。」
「……世界は変わってしまうものね、お父さんもお母さんも、今の私たちと同じ年齢だったらすぐ死んじゃうのに、私たちは老いても外見はほとんど維持されてる。 変化こそ、私は愛すべきものだと思うの」
「変化……ねぇ、、人類は死を克服しようとは思ってないよ。」
「老衰はほとんど克服できているのに、死は克服できないのかしら?、充分進化してるのに、もったいないわね」
「そもそも死、なんてもの自体、境目が曖昧なんだよ、数十年前は、確かに死を克服しようと考えている人達も多かった、でも再生威力が急速に成長する中で、とある問題に差し掛かったんだ」
「再生不死問題、ね」
「そう、再生不死問題、僕たちが学生だった頃は、人間は肺と心臓と脳が止まったら死亡することになっていた、でも今は、脳が完全になくなっても記憶も元通りに再生できるし、腐ってしまっても人体再生培養液の中にいれば、遅くとも1ヶ月で完全に復活できる、そんな技術が数十年前は世界でとても人気だったんだ。」
「でもやがて、とある医者が言ったんだ、骨になって灰になって、完全に消えてしまっても、髪の毛1本や指紋さえ残っていれば復活できるようになってしまったら、それは不死と同じだと、生物の尊厳を壊してしまうことになると主張したんだ。」
「それに追従するかのように、文化や宗教を大事にしている人達が盛んになって再生医療の廃止を求めたんだ、求心力がすごくて、人類は直ぐに再生医療を欠損された手足が治るまでに退化させ、病気で直ぐに死ぬようになった。」
「えぇ、知っているわ、私も、この病室の中で嫌という程知らされたもの」
「……俺としては、あずきには元気でいて欲しいよ……」
「そう言ってくれると嬉しいわ」
「ねぇ、けんじ」
「なに?、あずき」
「愛しているわ」
「俺も、愛しているよ」
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輪廻転生という考え方がある、仏教においての死後の世界についての主な考え方だ。
人間は死後、天道、修羅道、人間道、地獄道、餓鬼道、畜生道の6つの世界に転生するといわれている。
天道はいいことしたら行ける場所、極楽
修羅道は強くなるけど殺し合いをさせられる世界
人間道は今いる世界と同じ、たくさん宇宙がある
地獄道は悪いことしたら行く場所、地獄
餓鬼道は強欲な人が行く場所、ずっとお腹が空いている
畜生道は動物がドン引きする行為をした人が行く世界、要するに動物になる
お釈迦様とか、薬師如来とかの仏様は、そういう苦しい輪廻から抜け出した人達なんだと、それが解脱、悟りだね。
俺は悟りたいとは、今は思わない、別に仏教を信仰している訳では無いが、ここでは仏教を基本としたいから一時的に仏教徒になるとしよう。
理由は単純だ、生まれ変わった妻に逢いたい、どの世界でもいいから、逢いたいのだ。
奇しくも、俺は今妻と同じ病気にかかっている、後天性再生不良循環器老化症、循環器が急激に老いてきているんだ、世界政府が配った初期の再生薬が、数十年後体に急激に負担を与える病気でね、再生不死問題がでてくる前の世界で配られた薬を飲んだ人達は、負担を無理やり再生している感じらしい、ぅげぇ、気持ち悪い。
ともかくまぁ、なんだ、なんやかんやで楽しかった。
あずきは可愛かったし、高校の頃のバカ同好会をやってたメンツもまだ生きてピンピンしている、あいつらしぶといな(笑)
子供たちは今頃元気に木星旅行かぁ…オレも行きたかったぜ
悪いな、お前たちのお父ちゃんは先に逝ってるぞ
笑いあり涙ありの人生だったけど、生きててよかったと思う
それじゃ、あずきに逢ってくるよ
輪廻 彼岸華 @Karekisihanato1113
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