ヒーローになる方法
阿久澤
第1話 候補生①
兄弟で一冊のコミックを窮屈に肩をつけながら読んでいる時、そのページにはヒーローのなり方が記されていた。
腕立て伏せ100回、腹筋100回、スクワット100回、極めつけにランニング10km、そしてこれを毎日やる。
9歳の兄航也と一つ下の弟泰希は衝撃のあまり次のページに進めずにいる。しばらくの沈黙の後、泰希が口を開く。
「これやったらさ、ほんとになれるのかな?」
まっすぐな目と純粋な声色で質問してきた泰希に少し戸惑いながらも、兄が弟に強がらないはずもなかった。
「なれるにきまってるだろ。毎日やったら、きっとなれる」
何の根拠もない見栄っ張り発言をよそに、泰希は目を更に輝かせ、
「じゃあ今日から一緒毎日やろう!2人でヒーローになっちゃおうよ!」
泰希の無茶苦茶で非現実的な提案。そんな難題も兄の航也は強気で答える。
「わかった、今日から毎日な。途中でやめたくなっても知らないぞ。」
じゃあ行くか。と声をかけると泰希はまるで冒険に出かけるかのように興奮した様子で準備を始めた。運動着に着替え、靴を履き、まだ寒さがが残る春の夕暮れに小さい背中の兄弟が駆け出して行った。
2人のヒーロー候補生の、偉大な一歩目である。
ヒーローになる方法 阿久澤 @yaoshi
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