第2話 こっちじゃないです…神様…
「意識は途切れた… じゃないわよ!」
私、
死んだ理由は言わなくても分かるでしょ。お約束のやつ。
念願の転生が叶ったのだから、喜ぶべきなのかもしれない。でも、こっちじゃないんだ神様…!
「なんでよりによって、転生先がクレアなのよーーーー!」
気づいたのはついさっき。
喉が渇いたから水を飲もうとしたら、間違えて大人用のウィスキーを飲んでしまったのだ。
(法律的に大丈夫かしら?)
前世の私はオシャレなバーに足を運ぶくらいにはお酒を嗜んでいたため、4年ぶりのウィスキーの味に、記憶の蓋が開いたのだろう。
確かに、転生できたのも、転生先が〈虹恋〉の中なのも、嬉しいよ?
でもさ、ここまでやってくれたなら、転生先をレティーナたんにすることくらい、朝飯前だったんじゃないんですか、かぁみぃさぁまぁー!
虹恋をこれでもかというほどやりこんできた私には、レティーナたんの行動、言動は全てわかる。
(だって推しだもの!)
逆に言うと、レティーナたん以外がうろ覚えすぎる。
まさか本当に転生できるなら、もっと展開を覚えておくべきだったわ…
「お嬢様、どうかされましたか?」
侍女のルーシーの声が扉の向こうから聞こえる。
「大丈夫よルーシー。今読んでいる小説に感動してしまって。」
思いっきり嘘だけど、私はいつでも誠実なヒロインになんかなりたくないからちょうど良いんじゃないかしら?
でも、ヒロインになってしまったからには解決しなければならない事件が…
それにあのイケメンたちにも会わなくてはいけないなんて…
(今まではイラストだったから大丈夫だったけど、現物を見るのは流石に失神しそうだわ…)
あれ、現物を見られる…?
ということは、レティーナたんも見られる…?
しかも、姉として一番近くで…!?
(神様やっぱりありがとうございます! ちゃんと私が一番レティーナたんを見守れる場所を考えていてくださったのですね…!)
* * *
思い出すと、レティーナたんは私を嫌っていた気がする。
推しに嫌われるとか耐えられないし、レティーナたんにはずっと笑っていてほしい。
(レティーナたんは、王太子様の側近のジークが好きなのよね。)
私は一生レティーナたん推しを貫いていたから、どこがそんなに良いのかは分からないけど、レティーナたんに好きになってもらえるなんて、羨ましい…
「…!」
そもそも、レティーナたんは
だったら、私がジークと仲良くしないで、レティーナたんの恋を応援すれば良いんじゃない?
だって、私は虹恋のイケメンたちには興味ないし、レティーナたんを間近で応援できるとか、最高すぎるじゃない!
あっでも、自分で言うのもアレだけど、クレアの見た目はめちゃくちゃ可愛い(レティーナたんの次にね!)
だって虹恋ではヒロインだし…
だったら…レティーナたんの代わりに私が悪役令嬢になれば良いじゃない!
悲しいけど、前世ではレティーナたんはめっちゃくちゃ人気がなかった。
あんなに可愛いのに、好きな人とも結ばれず、人気もないのは、悪役として描かれていたからよね…
レティーナの可愛さを引き立てるために、私は悪役令嬢になるわ!
前世からの夢だし、ヒロインはレティーナたんで良いじゃない!
ごめんなさいね運営の方。
あなたたちが作ったヒロインは、もうこの世界にはいないわ。
だって、ヒロインの私がヒロインの自分を殺して、悪役令嬢になるんだもの!
ヒロインは私が殺しました。 世々原よよ @yoyoharaYOYO
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