うるせ

雛形 絢尊

第1話

引き裂くようなノイズ音、

張り裂けそうになる。

どどどどどと低い轟音が鳴る。

爆発音のような走行音、人の話し声。

この街に味方なんてない。

そう思ってしまった。

ぼわあと世界の視界が一瞬にして縮まった。

この世界は何のためにあるのか、

新宿のこの街に俺は一人きり。

バイクの音のような野太い音が通り過ぎる。

世界は広い、とはいえ閉鎖的だ。

そんなことを考えていると

背広を着た一人の男が話しかけてきた。

「あんた、この世の終わりを知っているか?」

俺は歯向かうように、

「んなの知らねえよ」

「ああ、俺も知らねえ」と男は言った。

「だが考えたことはあるか?」

私はん?と問う。

何を言っているんだ彼はと、私は考えた。

「どんな音してんのかってさ、

きっとそれは唐突に起きる。

この新宿の街の音はそれに近いと思っている」

耳をすませば何処かからか罵声が響き、

救急車が通り過ぎた。

カラスが頭上には飛び回り、

巨大なラットが這い回る。

派手な格好で騒ぐ者、

柱を掴み、声を上げる者。

地べたに嘔吐をするサラリーマン、

それに重なるサイレン。

気がつけば背広は消えていた。

俺はしばらくその場に立ち止まった。

街の音が一瞬にして消えた。

私はその無音の空間で嘔吐をした。

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うるせ 雛形 絢尊 @kensonhina

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