人は信用できない(1)
学生時代の気の優しい友人がある日突然、連絡をしてきた。
「一緒にビジネスをしないか?」
聞けばいまさら誰も引っかからないようなマルチ商法の勧誘だ。
しつこいので一度だけ説明会とやらに参加した。
そこではやたらに大きい話と世界の富豪のセリフの都合のいい部分だけの切り抜き、若返るだのガンが治るだのと根拠のない高額商品の説明。
ここで得られるのは数十万でその販売権利が得られるというものだった。
「どうだった?これ凄いだろ!」
「いや、俺はいいよ」
誘いは断ったがその後も定期的に連絡がきた。
同級生の中でも彼と関わるのはやめた方がいいと言う連絡も回り始めた。
ある日、そのマルチ友人から奢るからといわれ食事に向かう。
そこには友人と、所謂アップの人間がいた。
またしつこく胡散臭い話をされる。
2人が席を外した際に友人の置いていったノートを覗く。
そこには人を洗脳するイロハが書かれていた。
1、話すよりも話を聞く事を重視する
2、相手の話は肯定する。否定はしない。
3、相手の感動や好感を得られるマイストーリーを語る。
4、一緒に成功しようと定期的に声をかける
・
・
・
次のページには声をかけてきたであろう、リストと進捗状況が書いてあった。
ノートを元に戻してこっそり帰った。
マルチ商法の大半は中国など外国に本社を置くものが多く、その創設者は総じて大金持ちになる。それは人を騙すマニュアルを確立し、それを駆使してねずみ講を構築するからだ。
私はこの、人を騙すマニュアルを作る
人の悪意
と、知らず知らずのうちにそちら側に染まる
人の脆さ
が恐ろしい。
MENTAL teikao @teikao7857
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